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2018 年度 実施状況報告書

サンゴ礁域における六放サンゴ類の砂泥環境に対する適応の多様性解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15198
研究機関鹿児島大学

研究代表者

藤井 琢磨  鹿児島大学, 国際島嶼教育研究センター, 特任助教 (30772462)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワードサンゴ礁域 / 砂泥底 / 内湾
研究実績の概要

昨年度に引き続き奄美大島-加計呂麻島沿岸各所において繰り返しの定性調査を行った結果、内湾サンゴ群集には場所や環境ごとに下記の傾向があることが予測され、その概要については出版された一般向け図書にて概説すると共に論文発表にむけ詳細な解析が鋭意進行中である。

河口や内海:キクメイシモドキなど、ごく少数の六放サンゴが出現。一部の湾奥で小型の埋在性イソギンチャク類の単一群集も見つかった;岬などで遮蔽的な静穏な内湾:沖縄以南ではメソフォティック水深から報告されているのに類似した、葉状ないし繊細な枝状イシサンゴが優先する群集が斜面に局所的に発達していた。群集下縁に広がるシルト質の海底では比較的大きな自由生活性サンゴ、礫が混じる場所ではツノサンゴ目群体が低密度で見られた。本環境の深場からは未記載と思われるスナギンチャク1種が得られており、学会大会での発表を経て現在発表準備中;海峡や湾口付近:鹿角状サンゴ群体を主とする群集が斜面上部に見られた。斜面下部にはヒユサンゴやツノサンゴ群体が見られることが多い。当環境からは国内未記録2種および琉球列島未記録の1種と考えられるイシサンゴ目標本が得られており、現在論文発表準備中。また、当群集調査中に発見した砂泥底性魚類、チンアナゴ属1新種の発表を行った;外海に面した潮通し良い湾、あるいは海峡沿いの深場:スツボサンゴを主とした砂泥底性群集が複数見つかった。ムシモドキギンチャク科の1種も低密度に見つかった。奄美大島以北では分布記録のない埋在性スナギンチャク類標本も得られ、解析を進めると共に発表準備を行っている。
上記の各群集については、今後、環境要因の比較を含む客観的な区分けを行う必要があり、地形学ないし統計学的な観点から手法を再検討する必要が考えられる。また、得られた標本の同定に際しては多くの解析が必要になるため、現在、鋭意進行中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

昨年度までの調査で高被度ないし特異性の高いサンゴ群集が発見、あるいは存在が予想されたサイトでの定性調査を主に行ったほか、内湾サンゴ群集を特徴づけるために他海域での比較調査も合わせて行った。のべ111回の潜水調査で、奄美大島-加計呂麻島沿岸32カ所、島外(徳之島、口永良部島、屋久島、種子島、串本のサンゴ礁および内湾域)で32カ所の調査を行った。ドローンを用いた海岸線-浅海底地形と出現生物分布の関連性の考察も試した。
夏期~秋期には記録的な台風被害に見舞われ天候不順および調査サイトにおける安全確保の問題から調査が進まず、また冬期には研究拠点の移転が急遽進められたため、得られた標本の同定に関する解析、および特筆すべきサンゴ群集サイトにおける定量調査の試行が遅れた。

今後の研究の推進方策

今年度は、アクセスの困難さから未調査の湾(例えば、請島水道に面する諸鈍湾、伊子茂湾の湾口近くおよび湾奥、加計呂麻島の薩川湾、笠利湾の湾口付近など)での群集探索と内湾サンゴ群集の定性調査を進める。また、奄美大島の南北に連なる他島での内湾サンゴ群集の定性調査を行い、奄美大島で見つかるサンゴ群集との比較を行うことで当島沿岸の内湾サンゴ群集の特性を明らかにする。
試行が遅れている定量調査については、他海域での観察例が稀で、かつ構成種数が比較的少ないスツボサンゴ優先砂泥底性サンゴ群集に重点をおいて比較調査を試行することで、当環境における評価手法の検討を行いつつ種同定を円滑に進め、本研究課題の目的の一つである、サンゴ礁浅海域における内湾サンゴ群集の海域ごとの特異性を明らかにする。これまで得られている標本についても解析作業を進め、随時、論文発表を行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 3件)

  • [雑誌論文] 最新のイソギンチャク分類体系の紹介とそれに伴う和名の提唱2019

    • 著者名/発表者名
      泉貴人, 藤井琢磨, 柳研介
    • 雑誌名

      タクサ日本動物分類学会誌

      巻: 46 ページ: 54~63

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 徳之島および沖縄島からのドウクツベンケイガニの初記録2019

    • 著者名/発表者名
      藤田喜久, 藤井琢磨
    • 雑誌名

      Fauna Ryukyuana

      巻: 48 ページ: 1~3

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A new garden eel, Heteroconger fugax (Congridae: Heterocongrinae), from the northwestern Pacific Ocean2018

    • 著者名/発表者名
      Koeda K, Fujii T, Motomura H
    • 雑誌名

      Zootaxa

      巻: 4418 ページ: 287~295

    • DOI

      ttp://dx.doi.org/10.11646/zootaxa.4418.3.6

    • 査読あり
  • [学会発表] The coral killing sponge Terpios hoshinota at Amamioshima Island, the northernmost outbreak2018

    • 著者名/発表者名
      Fujii T, Kumagai K N
    • 学会等名
      4th Asia Pacific Coral Reef Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] Molecular phylogeny and morphological variation of Euphyllia anco4th Asia Pacific Coral Reef Symposiumra2018

    • 著者名/発表者名
      Kitano Y F,Fujii T, Oku Y, Nomura K, Tachikawa H & Fukami H
    • 学会等名
      4th Asia Pacific Coral Reef Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] Outbreak of the “black disease” cyanobacterial sponge Terpios hoshinota at Amamioshima Island, Japan2018

    • 著者名/発表者名
      Fujii T, Kumagai K N
    • 学会等名
      The 1st Maluku International Conference on Marine Science and Technoloty
    • 国際学会
  • [学会発表] トカラ列島で発見されたヤドリスナギンチャク科の1種2018

    • 著者名/発表者名
      藤井琢磨
    • 学会等名
      日本動物分類学会第54回大会
  • [学会発表] 日本産の旧ナガレハナサンゴ属の分子系統解析2018

    • 著者名/発表者名
      北野裕子, 藤井琢磨, 奥裕太郎, 野村恵一, 立川浩之, 深見裕伸
    • 学会等名
      日本サンゴ礁学会第21回大会
  • [学会発表] 奄美大島志戸勘海岸における有藻性サンゴ類被覆性海綿の被覆状況について2018

    • 著者名/発表者名
      藤井琢磨, 熊谷直喜
    • 学会等名
      日本サンゴ礁学会第21回大会
  • [学会発表] 奄美大島沿岸で見つかった最北限となるサンゴ被覆性海綿テルピオスの大増殖2018

    • 著者名/発表者名
      藤井琢磨
    • 学会等名
      2018年度喜界島国際サンゴ礁科学シンポジウム

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公開日: 2019-12-27  

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