研究実績の概要 |
女王アリは羽化後まもない時期にしか交尾しないため、交尾後、精子を寿命が続く限り受精嚢の中に貯蔵する。多くの種の女王アリの寿命は10 年以上と、昆虫としては例外的に長寿のため、精子貯蔵期間も約10 年以上と極端に長い。この精子貯蔵能力は極めて特殊であるが、その仕組みを解明した研究は皆無である。 本研究では、生理学的・分子生物学的アプローチにより、精子を保護する側の受精嚢の機能と、保護される側の貯蔵精子の生理状態を明らかにすることで、 アリ科女王の長期間の精子貯蔵メカニズムを解明することを目指している。 これまでに、RNA-seq法とin situ hybridization法を組み合わせ、アリ科女王 (キイロシリアゲアリを使用)の受精嚢のみで強く発現している遺伝子12個や、機能は不明だが非常に多く発現している遺伝子を多く発見しており (Gotoh et al., 2017)、これらがアリ科の精子貯蔵に特殊化した機能をもつ遺伝子であると期待している。本研究では、これらの遺伝子の機能を調べるために、遺伝子配列から機能の推定、RNAi法によるノックダウン、タンパク質合成による解析などを計画している。これらの遺伝子はRNA-seqテータを利用してde novo assembly したことにより塩基配列を得ているため、最初にサンガーシークエンスによる配列の確認と全長が得られていない遺伝子についてはRACE法を用いた全長配列の決定をする必要があった。現在までに、注目している遺伝子のほぼすべての全長配列を決定し、クローニングをおこなった。また、RNAiをおこなうための二本鎖RNAの作成もおこなった。
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