研究課題/領域番号 |
17K15201
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研究機関 | 国立研究開発法人森林研究・整備機構 |
研究代表者 |
飯田 佳子 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (40773479)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 機能形質 / 窒素含有量 / 稚樹センサス |
研究実績の概要 |
当年度は採取したサンプルの窒素含有量の分析およびデータの統合を行い、目標1の「資源利用とそれに関わる形質間の関係を異なる生育段階で解析する」に対し、窒素含有量を加えて再解析した。また、4ha調査区のコア区画(1.2ha)において、1㎝から5㎝の樹木個体のセンサスを行い、より多くの樹種の稚樹の成長・生存データを推定できるようなデータを得た。 昨年度までに稚樹の成木の形質データを測定した共通樹種のうち、成長と生存の解析に用いることのできる2調査区間(約4年間)ののべ個体数が30個体以上の28樹種を抽出した。これらの樹種において、当年度分析した窒素含有量を含む葉や材の形質の関係を稚樹と成木で再解析したところ、9種類の形質すべてにおいて、有意な正の相関がみられた。よって、各形質において、生育段階で種のランクは変化しないことが分かった。8種類の葉の形質に関して主成分分析を行った結果、稚樹においては、第1軸が葉の硬さや厚さ、窒素含有量や水分含有量と関連し、44.8%を説明し、第2軸は比葉面積、個葉面積や乾物含量と関連し、34.3%を説明した。成木においては、第1軸が比葉面積や乾物含量と関連し、44.7%を説明し、第2軸が水分含有量や葉の厚さと関連して、32.9%を説明した。稚樹の第1軸と成木の第2軸が、稚樹の第2軸と成木の第1軸は有意な相関関係にあった。よって、各形質の樹種ランクは生育段階の違いでは大きく変化しないうえ、葉の各形質の相対的な位置付けも稚樹と成木ではあまり変化しないことが明らかになった。また、これらの関係が動態特性や分布などどのように関連するかを検討する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度まで入手困難であった化学分析に用いるヘリウムガスが夏頃から入手できたが、新型コロナウイルスにより実験補助を新規に雇うことができず、分析が遅れたものの、今年度中には分析を終えることができた。また、新型コロナウイルスの感染予防対策を行いながら、稚樹の定期的なセンサスも実施でき、長期的な傾向を把握できるようになったことから、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、今年度の成果をもとに、動態特性との関係を明らかにし、目標2の「環境作用と生物的作用における形質の相対的重要性を異なる生育段階と空間スケールで推定する。」の結果をまとめ、学会や国際誌で成果を公表したい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスにより実験補助やデータ入力補助を新規に雇うことができず、実験や入力作業が遅れ、そのため解析や論文執筆も遅れた。次年度は成果の取りまとめを行い発表するための、図書資料購入や論文の英文校閲費用、成果発表のための学会参加費・旅費などに使用する予定である。
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