研究課題/領域番号 |
17K15202
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
森田 航 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (20737358)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 類人猿 / 進化 / 大臼歯形態 / エナメル象牙境 |
研究実績の概要 |
今年度は引き続き現生類人猿の上顎大臼歯間の形態変異の解析を進めた。当初は食性の若干異なるゴリラが他の種とは異なる大臼歯間変異を持つと予想していた。だが各種・各大臼歯の平均形状間の変化の仕方を詳しく調べていくと、概ね現生類人猿は漸次的な変化を示すのに対し、ヒトでは第1大臼歯から見た第2大臼歯と第3大臼歯の変化の仕方が大きく異なっていた。ヒト化の過程で広く類人猿に共有されていた変化パターンから外れて新しくヒト特有のパターンを獲得したことが示唆される。このことに関する論文を執筆中で近日中に投稿予定である。さらに本研究では大量のCTデータから大臼歯のエナメル象牙境を抽出する必要があるが、その過程を自動化し作業の効率化ならびに時間短縮を図るために、ディープラーニングを用いた新しいセグメンテーション方法の確立を目指す試みも開始した。また今年度は新しくトルコでの化石発掘調査に参加し、新しい化石の取得に向けた足がかりを得た。アフリカ類人猿の共通祖先を探すため我々がケニアで発掘している後期中新世の地層とほぼ同時代の化石サイトがトルコにはいくつもあり、格好の比較資料となりうる。また上記の上顎大臼歯の研究においても重要なテーマとなっているヒト化過程における形態的な変化を探る上で重要な更新世のサイトも確認できた。今後は2つの時代を対象として本格的に発掘に移りたいと考えている。またケニアにおいても引き続き調査に参加しケニア国立博物館での資料調査、ならびに作業も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進んでいる。今年度は少なくとも一つの論文を投稿、受理させるとともに、もう一つ方法論についての短報を一報投稿したいと考えている。さらに海外での発掘調査地の選定も概ね終わり、新しい資料獲得に向けた準備も整いつつある。
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今後の研究の推進方策 |
現生種を用いた比較研究については資料も揃いあとは作業を進めていくだけである。化石についてはどのように形態情報を抽出するのかが課題となっていたが、新しいセグメンテーション方法の開発に目処がついたことで、これについても分析を進めていくことができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
フィンランドに長期滞在し研究を進めることとなったため日本国内旅費として計上していた経費を使用しなかった。次年度はトルコ、ならびにスペインとヨーロッパ内での発掘調査に参加する予定なのでその経費としたい。
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