研究課題/領域番号 |
17K15203
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
橋戸 南美 (鈴木) 京都大学, 霊長類研究所, 研究員 (60772118)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 霊長類 / 苦味 / 採食 / コロブス |
研究実績の概要 |
オナガザル上科(旧世界ザル類)に属するコロブス亜科は、3-4 つにくびれた特殊な胃をもち、葉食に特化した食性を示す。一方で、同じ上科のオナガザル亜科は他の霊長類種と同様に単胃をもち果実食である。近縁な両者が異なる食性を獲得した背景にある分子基盤についての知見は乏しい。本研究では、食物選択に関わる「味覚」、葉に含まれる毒性物質を分解する「解毒」に着目し、葉食適応を果たしたコロブス亜科がどのようにこれらを適応させたかを解明することを目的としている。 当初、ボルネオ島に同所的に生息する旧世界ザル4種を対象とする予定であったが、調査許可の関係で研究開始が遅れてしまっている。そのため、ボルネオ島と同様に同所的に旧世界ザルが生息し、ボルネオ島よりも生息種数の多いウガンダ共和国キバレ国立公園を調査地として設定し、本研究を開始した。本年度は共同研究者が収集したフン試料からDNAを抽出し、全30種類ほどの苦味受容体遺伝子の配列解析を行った。これまでにベルベットモンキー、アカコロブス、クロシロコロブスの3種で配列解析を終えた。一つの苦味受容体に着目し、解析した遺伝子配列をもとにして発現ベクターを作成し、細胞アッセイによる受容体機能解析を行った。その結果、3種での苦味受容体反応性に有意な種間差がみられ、興味深い結果を得ることができた。今後、本成果は国内学会で発表する予定であり、今後共同研究者と議論を深めていき、論文執筆を開始する予定である。 また、解毒に関する研究については、共同研究者との議論を重ね、実験系を相談している。今後、まずは飼育下旧世界ザルのフン試料を用いた消化試験で実験系を組み立て、その後、野生下での実験を行う予定であり、実験系を検討していく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の通り、調査許可の関係で、当初の対象種・調査地からは変更することになったが、同様の特徴を持つ別の調査地に生息する旧世界ザルを対象とすることで、本研究計画の目的に合致した研究を進行することができている。 コロブス亜科における味覚の研究に関しては、苦味受容体の機能解析まで行うことができ、当初の予定通り研究が進行している。今後は、苦味受容体の反応性の種間差が、野生下での採食行動・食物選択にどのように関係しているかを明らかにするために、共同研究者からいただいた野生下での採食データを照らし合わせて、味覚の違いと採食行動の違いの関係を明確化する。 解毒に関する研究については、当初の計画通り一年目は共同研究者との実験系の打ち合わせ等を行うことができたため、二年目以降、飼育下での条件検討を行い、予定通り進行していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
一年目は、着目した一つの苦味受容体における機能解析を行い、種間比較を行った。現在はその成果を論文としてまとめるために、共同研究者との議論を重ねている。今後は、さらに別の苦味受容体においても種間比較を行い、より多角的に苦味感覚を比較する予定である。また、これまでに同所的に生息する3種の解析を行ったが、他にもまだ解析できていない種があるため、現在追加での試料収集を依頼しているため、試料が集まり次第、他の種についても解析する予定である。解毒に関する研究についても、上述の通り、まずは飼育種のフン試料を用いて消化試験を行い、条件検討を行い実験系を確立させることで、今後は野生種への応用を行い、野生コロブス種における、解毒能の評価を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
計画当初は、当該年度での海外調査を予定していたが、調査許可の関係のため渡航することができなかった。そのため次年度以降、当初計画していた海外調査を行う予定である。また、物品・消耗品についても前年度から引き続き使用したものが多く、当初の計画よりも購入量が少なかった。次年度以降、新規での実験系(消化試験等)を計画しているため、その際に新規の物品を購入する予定である。
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