研究課題
葉食性で複数の部屋に分かれた特殊な胃をもつコロブス亜科と、果実食性で他の霊長類種と同様な単胃をもつオナガザル亜科で、両者が異なる食性を獲得した背景にある味覚・解毒機構についての解明を目的としている。研究対象はボルネオ島サバ州に生息するオナガザル科(コロブス亜科2種、オナガザル亜科2種)である。昨年度に申請していた調査許可が得られたため、本年度はサンプル収集のために渡航する予定であったが、妊娠により渡航が難しくなったため、共同研究者の松田准教授が対象とする4種の糞便試料を収集した。産休からの復帰後に、これらの試料を用いて苦味受容体遺伝子の配列解析・機能解析を行う予定である。今年度は国内の動物園で飼育されているコロブス類の糞便試料を収集し、苦味受容体遺伝子配列解析を行った。解毒機能については、コロブス類の消化管微生物がもつ毒性物質の分解機能を探るために、採取した糞便試料を毒性物質を含む培地中に添加して培養し、培地中の消化管微生物の単離および遺伝子配列解析による菌種の同定を行った。また昨年度に単離した、テングザルの前胃由来新種乳酸菌について、詳細な遺伝子解析・機能解析を行い、日本霊長類学会でその成果を発表した。この内容については、学術論文を執筆して投稿し、現在修正作業中である。復帰後には液体クロマトグラフィー質量分析装置(LC/MS/MS)を用いた化学分析を予定しており、消化管微生物による毒性物質の分解過程をより詳細に調べる予定である。本年度は標準物質を用いた条件検討を行い、対象物質の測定条件を決定した。
2: おおむね順調に進展している
テングザル前胃試料より単離した新種の乳酸菌についての詳細な遺伝子・機能解析を行い、それらの成果について日本霊長類学会での発表を行った。さらに本乳酸菌種のゲノム解析を行い、より詳細に本菌種についての遺伝的情報を得られることができた。本菌種の新種提唱論文を執筆し、国際誌に投稿した。妊娠により、計画していた野外調査・サンプル収集を行うことはできなかったが、共同研究者にサンプル収集を依頼した。また、復帰後に行う予定の化学分析についても条件検討を行うことができ、順調に研究が進展した。
本年度に収集した野生霊長類種の試料のDNA抽出および苦味受容体遺伝子解析を行い、対象種間での苦味受容体レパートリー比較、受容体機能比較を行う予定である。テングザルより単離した新種乳酸菌や他のコロブス類消化管微生物が示す毒性物質分解作用を調べるために、毒性物質を含んだ培地中でこれらの微生物を培養し、培養後の培地中成分を分析する。分析条件は本年度に検討を行ったため、復帰後は実際の試料を用いて分析を行う予定である。
妊娠により研究期間の途中で研究を中断した。そのため、次年度使用額は復帰後に使用する予定である。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件) 学会発表 (1件)
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