研究課題/領域番号 |
17K15204
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
津山 淳 公益財団法人東京都医学総合研究所, 生体分子先端研究分野, 研究員 (20760101)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 神経幹細胞 / エピゲノム解析 / ゲノム編集 / 神経科学 |
研究実績の概要 |
ヒトは進化の過程で巨大な大脳皮質を獲得しており、それにより優れた高次機能を得ることに成功している。近年、マウスとヒトの神経幹細胞の発現比較解析から、大脳皮質の拡大に貢献したヒト特異的因子の探索が盛んに進められている。しかしながら、これらの表現型を説明しうるゲノム配列の種差に関してはほとんど分かっていない。哺乳類間で遺伝子やプロモーターは高く保存されているが、エンハンサーは多様性に富んでいることからエンハンサー領域の差異がヒトの特性を主に定めていると考えらている。そこで本研究では、エピゲノム解析とゲノム編集技術によって種特異的なエンハンサーの機能的解析を行うことによって、大脳皮質の進化に関連したゲノム変異領域の探索を行っている。Assay for Transposase Accessible Chromatin with high-throughput sequencing (ATAC-seq)によって胎生期神経幹細胞および、それをサポートするグリア細胞のオープンクロマチン解析を行っており、哺乳類で保存されているがヒトにおいて欠失しているオープンクロマチン領域を同定している。このようなエピゲノム解析に加え、ゲノム編集技術を組み合わせることによって、種特異的なエンハンサーの機能解析および標的遺伝子の同定を同時並行に行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
少数の細胞からエピゲノム解析手法を行うことのできる系を導入したことにより、神経幹細胞から生み出された神経細胞の生存やネットワーク再構築を担っているミエロイド系細胞を脳から抽出し、解析を行うことが可能となった。ミエロイド系細胞においてもヒト特異的に欠失しているエンハンサーを同定し機能解析を進めている。 また、本年度はゲノムワイドにエンハンサーの標的を3次元構造的に明らかにできる手法の立ち上げを行い、機能させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
エンハンサーの標的遺伝子を同定し、種特異的な発現動態を示す遺伝子群がどのようなエンハンサーに制御されているのかを明らかにする。それらの領域がヒトに至る進化の過程においていつ欠失したのかを調べるため比較ゲノム解析を行う。また幹細胞に限らず、神経発生をサポートする脳細胞に関しても同様の解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
少数細胞を用いたゲノムワイドなクロマチン相互作用解析法の立ち上げに時間を有した。これらの技術によって得られたサンプルを次世代シークエンサーによって解析しており、それらのより詳細な高次解析を来年度遂行する。
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