研究課題/領域番号 |
17K15207
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
北崎 一義 北海道大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60532463)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
|
キーワード | 育種 / 雑種強勢 / テンサイ |
研究実績の概要 |
ヘテロシス(雑種強勢)は、生体量、成長速度および繁殖力などにおいて、種内あるいは種間の交雑によって得られた後代が両親を上回る現象であり、農作物ではハイブリッド品種として広く利用されている。しかし、その分子メカニズムの詳細は明らかにされていない。本研究では、テンサイの初期生育におけるヘテロシスの発現メカニズムについて基礎的知見を明らかにし、ハイブリッド育種の効率化に貢献することを目的に行われる。 1.テンサイの屋内水耕栽培システムを構築した。圃場試験で収穫時の肥大根重の増加が確認されているF1とその両親を試験栽培し、本栽培システムを用いた初期生育において、ヘテロシスの発現を確認することができた。 2.光環境が異なる二つの栽培環境条件で、親二系統およびそのF1を栽培し、31の形質について経時的に調査した。調査日は播種後4回設けた。その結果、いずれの栽培環境においても、特に栽培後期でほぼ全ての形質においてF1が両親を上回るヘテロシスを確認した。また、最も相対成長率が高い時期は播種後24-27日であった。 3.肥大根の内部組織を調査した。親二系統に比べてF1では、形成層間の細胞サイズが肥大しており、肥大根重のヘテロシス発現の要因として、細胞数の増加よりも急速な細胞サイズの増加の方が寄与していることが示唆された。 4.次世代シーケンサーを用いて親二系統のゲノムシーケンスを行い、クオリティーが高い配列を得ることできた。得られた配列を、テンサイのリファレンスゲノムにマッピングした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
表現型解析について、予定通り実験は順調に進んでおり、転写解析等に適した部位や播種後日数を選定することができた。ただし、注視すべき形態も散見されるため、F2集団を用いてさらに詳細に明らかにする必要がある。一方、ゲノム解析について、リファレンスゲノムへのマッピングは完了したが、最近になって新規のテンサイ系統の全ゲノム配列が公表されたため、それを解析対象に含めることとした。現在系統間で比較解析中である。
|
今後の研究の推進方策 |
計画通りに研究を行う。転写解析によってヘテロシスに寄与する候補遺伝子群を明らかする。また、F2集団を用いて候補遺伝子群をさらに絞り込む。これらの解析によって明らかにされた有力候補遺伝子群を、ゲノム解析の系統間比較結果と照合し、ヘテロシス発現の分子メカニズムの解明に取り組む。
|
次年度使用額が生じた理由 |
被雇用者の都合により退職したため、人件費として計上していた予算分を使用しなかった。次年度は、本年度選定したサンプルを用いて、RNA-seqによって系統間の遺伝子発現を比較する。必要であれば、qRT-PCRで詳細に定量する。
|