研究課題
バイオマス増加に関するヘテロシス(雑種強勢)は、農作物のハイブリッド品種に広く利用されている。しかしながら、分子メカニズムの詳細は不明である。本研究ではテンサイ初期生育におけるヘテロシスの発現機構について基礎的な知見を明らかにし、ハイブリッド育種の効率化に貢献することを目的とする。昨年度の研究では、テンサイ初期生育におけるF1のバイオマスの増加について、期間や時期などを詳細に明らかにすることができた。以下に本年度の研究結果を示す。1.表現型解析からヘテロシスの発現に高く寄与していると考えられる時期において葉と根からRNAを抽出し、RNA-seq解析に供試した。テンサイリファレンスゲノムにコードされる遺伝子についてF1と各親系統で比較したところ、発現変動遺伝子の数は、いずれの器官においても親系統間の方がF1と各親との間よりも多かった。2.F1が両親よりも発現が促進されている遺伝子の数は、全遺伝子数の0.2-0.3%であった。次にこれらの遺伝子群についてGOエンリッチメント解析を行ったところ、有意なGOタームは検出されなかった。3.データベース上で公開されているテンサイ6系統のゲノムについて、系統間で保存されている割合を遺伝子ごとに明らかにした。全系統で高く保存されている遺伝子は全体の約40%であった。また、発現解析において発現変動していない遺伝子群では、全系統で保存されている遺伝子の割合が高かった。
2: おおむね順調に進展している
RNA-seqによる遺伝子発現解析を計画通りに行い、新たな知見を得ることができた。ゲノム配列については供試系統の解析を進めている。
計画通りに研究を行う。本年度は、F2集団を用いてヘテロシス発現に寄与する候補遺伝子を絞り込み、ヘテロシス発現の分子モデルを検証する。
人件費削減によって差額が生じ、その分は物品費として利用した。翌年度の物品費として利用する。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (7件)
Theoretical and Applied Genetics
巻: 132 ページ: 227-240
https://doi.org/10.1007/s00122-018-3211-6
PLOS One
巻: 13 ページ: e0198409
https://doi.org/10.1371/journal.pone.0198409
Scientific Reports
巻: 8 ページ: 7914
https://doi.org/10.1038/s41598-018-25686-0