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2017 年度 実施状況報告書

イネPolycomb複合体が制御する胚乳発生機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 17K15210
研究機関横浜市立大学

研究代表者

殿崎 薫  横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特別研究員(PD) (20749494)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2020-03-31
キーワード胚乳 / ポリコーム複合体 / イネ
研究実績の概要

イネの初期胚乳発生は収量や品質を決定する重要な過程である.コメの主成分であるデンプン合成が行われる登熟過程に関わる研究は古くから行われており,関連する因子も数多く単離されている.一方で,登熟期以前の過程,初期胚乳発生に関わる分子は,ほとんど明らかになっていない.これまでの解析から,イネのPolycomb repressive complex 2(PRC2)構成因子の1つであるOsEMF2aは,初期胚乳発生,特に胚乳の細胞化の過程に関わっていることを明らかにしてきた.そこで本研究では,イネ胚乳におけるPRC2が制御する胚乳発生メカニズムを明らかにするため,イネPRC2変異体の機能解析と共に,胚乳におけるトランスクリプトームおよびChIP-seq解析から,初期胚乳発生に関わるPRC2標的遺伝子を同定し,その機能解析を実施する.
今年度はOsEMF2a以外のPRC2構成因子の胚乳発生への影響を明らかにするため,全てのPRC2構成因子のT-DNA挿入系統を取得した.T-DNA挿入系統の無いものに関してはCRISPR/Cas9システムを用いて変異体系統の作出を行った.その結果,OsFIE2以外のT-DNA挿入系統または変異体を取得することができたが,emf2a変異体と同様に胚乳発生に異常の見られる変異体は得られなかった.イネPRC2構成因子はそれぞれ2コピー存在するため,機能重複しているものと考えられる.しかし,OsEMF2aにもOsEMF2bがパラログとして存在するが, emf2aでのみ胚乳発生の異常が見られるため,OsEMF2a単体で主要な機能を担っていることが示唆された.また,PRC2標的遺伝子の同定に向けて, emf2aから得られた細胞化していない胚乳のRNA-seq解析を実施し,野生型イネの細胞化前後の胚乳と比較することで,emf2aの胚乳で発現変動する遺伝子を抽出した.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り進行している.当初はemf2a以外の胚乳発生の異常が見られる変異体を同定し,複数の変異体で同様の解析を実施する予定であったが,胚乳で表現型の見られる変異体は同定できなかった.しかし,胚乳の細胞化過程にはOsEMF2aが単体で主要な機能を担っていることが明らかにできた.また,emf2aの胚乳のRNA-seq解析からPRC2標的遺伝子の候補を同定することができた.

今後の研究の推進方策

計画通り,PRC2によってH3K27me3修飾を受けている遺伝子を網羅的に同定するため,イネの胚乳におけるH3K27me3抗体を使用したChIP-seq解析を実施する.また,今年度行ったRNA-seqの結果とChIP-seqの結果から,PRC2の標的遺伝子を同定する.その中で,胚乳の細胞化タイミングに相関関係の見られる遺伝子について,変異体の作成を行い,その機能解析を実施する.
emf2aでは胚乳発生が異常になり,種子が致死するが,わずかに胚乳細胞の形成が見られる.加えて,emf2a・emf2bの二重変異体では,種子の致死率が増加することから,寄与率は低いもののOsEMF2bも胚乳発生過程に関与している,またはOsEMF2aの機能を部分的に補填している可能性が考えられる.そこで,OsEMF2aとOsEMF2bの胚乳における機能解析を実施し,その機能の違いを明確に明らかにする.

次年度使用額が生じた理由

当初の計画では,RNA-seqおよびChIP-seqのデータ解析のための,モバイルワークステーションの購入を予定していたが,研究代表者がカリフォルニア大学デイビス校に長期渡航し,当該施設に設置されている解析サーバーの利用が可能になったために,解析用ワークステーションの購入を見送ったため,次年度使用額が生じた.
次年度に計画しているChIP-seq解析では,ライブラリー作成やシークエンスに関するキットの購入など,必要となる予算が予定よりも多いことが予想される.加えて,当初の予定に加え,OsEMF2aおよびOsEMF2bに着目した解析を実施する予定であるため,次年度使用額と翌年度分助成金を合わせて,計画的に使用する.

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (2件) (うちオープンアクセス 1件、 査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Overcoming the species barrier by ploidy manipulation in the genus Oryza2018

    • 著者名/発表者名
      Tonosaki Kaoru、Sekine Daisuke、Ohnishi Takayuki、Ono Akemi、Furuumi Hiroyasu、Kurata Nori、Kinoshita Tetsu
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: 93 ページ: 534~544

    • DOI

      10.1111/tpj.13803

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 特集記事 ワークショップ報告「受精後雑種障壁研究の育種利用に向けて」2017

    • 著者名/発表者名
      石井孝佳・岡本龍史・殿崎 薫・長岐清孝・木下 哲
    • 雑誌名

      育種学研究

      巻: 19 ページ: 35~40

    • オープンアクセス

URL: 

公開日: 2018-12-17  

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