研究課題/領域番号 |
17K15211
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
塩野 克宏 福井県立大学, 生物資源学部, 准教授 (20610695)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アポプラストバリア / イオノーム / 湿害 / カスパリー線 / スベリン / 外皮 |
研究実績の概要 |
水田転換畑において畑作物の湿害が問題となっている。しかし、強耐湿性の育種材料がないだけでなく植物の耐湿性メカニズムには未解明な部分が多く、耐湿性品種の作出は困難である。今年度、耐湿性に深く関与する根の表皮側に形成されるアポプラスト(細胞外空間)輸送のバリア機能を失ったイネ変異体(reduced culm nomber1, rcn1)をイオノーム解析することで、湿害の主要因となる有毒物質(元素)を特定を試みた。まず、地下部に蓄積した元素量を誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)法で一斉分析した。その結果、過湿ストレスを受けたrcn1変異体は野生型よりNaを過剰に根に集積することが分かった。さらに、同じ処理をした根の一部を粒子線励起X線(PIXE)分析を用いて元素をマッピングしたところ、過湿ストレスを受けたrcn1の根の表皮近くにFeが過剰に集積することが分かった。来年度、NaとFeの過剰吸収がrcn1の生育阻害の原因であるのかどうかについての生理学的、分子生物学的な検証を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、イネrcn1変異体のイオノーム解析の他に、rcn1の原因遺伝子であるRCN1/OsABCG5を35Sプロモーターにより過剰発現させたイネ系統転換体を作出する予定であった。形質転換に成功しておらず、これまでのところ、T0個体を得ることができていない。引き続き、形質転換体の作出を試みる。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、作出したRCN1/OsABCG5過剰発現体を用いて、湿害と関連が高いと考えられるNaとFeの過剰吸収をRCN1/OsABCG5過剰発現体が抑えることができているかどうかを検証する予定である。形質転換体がこれまでのところ得られていないため、根の外皮を制御する植物ホルモンであるABAをrcn1変異体に投与することで、rcn1変異体に強制的に外皮のスベリン化を誘導させる。この状態における、NaとFeの流入を確認することで、外皮の有毒元素の流入・蓄積を阻害できるかどうかを調べる。これにより、有毒元素の流入・蓄積がみられなければ、アポプラストバリア機能を強化した耐湿性品種を作出できる可能性を示すことになる。以上の成果はアポプラストバリア強化による過湿ストレス耐性品種の作出の基盤となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
参加予定を予定していた学会への参加をとりやめたことから、旅費として計上していた金額が実際の使用額よりも圧縮された。繰り越し金について、来年度、予定している共同研究者の招聘しての情報交換、研究打合せをするための謝金として執行する予定である。
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