研究課題/領域番号 |
17K15212
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研究機関 | 公益財団法人岩手生物工学研究センター |
研究代表者 |
清水 元樹 公益財団法人岩手生物工学研究センター, ゲノム育種研究部, 研究員 (90734343)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抵抗性遺伝子 / AVR遺伝子 / 罹病性遺伝子 / ペア抵抗性遺伝子 / イネ / いもち病菌 |
研究実績の概要 |
病原菌感染に必要な宿主因子の機能を低下させることにより、広範囲の病原菌レースに対する抵抗性を宿主植物に付与することが可能である。こうした宿主因子をコードする遺伝子を、罹病性遺伝子と呼ぶ。本研究では、外国イネ由来の新規抵抗性遺伝子と、それに対応するいもち病菌の非病原力(AVR)遺伝子を単離し、AVR遺伝子産物の宿主標的因子を同定することにより、罹病性遺伝子を獲得する。平成29年度の主な研究内容は以下の通りである。(1)いもち菌株(2012-1)に対して抵抗性を示す海外系統Ib3が持つペア抵抗性遺伝子Pias-1/Pias-2の単離、(2)Piasに対応するいもち病菌因子AVR-Piasの単離、(3)他の外国イネIb4, Ib17, Ib18が持つ抵抗性遺伝子座の詳細な解析、(4)AVR-Piasの宿主標的因子の探索。得られた研究実績の概要は下記の通りである。(1)については、前年度までに単離済みである抵抗性遺伝子Pi-Ib3(Pias-1)が、近傍に位置するPias-2の存在を必要とすることを明らかにした。(2)については、Piasを持つ系統に対して感受性を示すいもち菌株(AVR-Piasを持たない)と2012-1菌株の全ゲノム連関解析と発現解析によって有力な候補遺伝子を選抜した。候補遺伝子はAVR-Piasを持たないいもち菌株に導入後、Piasを持つ系統に接種することでその機能を確認した。(3)については、複数の候補遺伝子を選抜に至っている。(4)については、解析の準備が整ったので、平成30年度に集中して実施する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、新規の罹病性遺伝子をAVR遺伝子の宿主標的因子として同定することにある。平成29年度において、新規のペア抵抗性遺伝子(Pias1/Pias2)の単離とその病原菌側の相互作用因子(AVR-Pias)を同定できたことは非常に大きな進展と考えらえる。更に、他の外国イネが持つ新規抵抗性遺伝子の候補遺伝子の選抜も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度において、新規の抵抗性遺伝子とその対応するAVR遺伝子の単離に成功している。同様の手法を用いることで他の外国イネ(Ib4, Ib17, Ib18)が持つ抵抗性因子とその対応するAVR遺伝子の単離を進める。既に候補遺伝子が選ばれているものについてCRISPR/Cas9システムによる遺伝子ノックアウト系統を作出しその機能を調査することで遺伝子を迅速に単離する。 Pias(Pias-1, Pias-2)とAVR-Piasの相互作用機構を酵母2ハイブリッド法や免疫沈降法によって明らかにする。また、AVR-Piasの感受性系統における標的因子をY2H法や免疫沈降法などにより選抜する。選抜した遺伝子を感受性系統でCRISPR/Cas9 システムにより遺伝子ノックアウトし、罹病性遺伝子としての機能を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由、順調な進捗状況を受け、次年度に非常に多岐に渡る研究計画が予想され、新たに人件費、消耗品費等が生じることが考えられたため。 使用計画、シーケンス試薬の購入費、研究を迅速に進めるため研究補助者を雇用する人件費として使用する。
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