研究課題
病原菌感染に必要な宿主因子の機能を低下させることにより、広範囲の病原菌レースに対する抵抗性を宿主植物に付与することが可能である。こうした宿主因子をコードする遺伝子を、罹病性遺伝子と呼ぶ。本研究では、外国イネ由来の新規抵抗性遺伝子と、それに対応するいもち病菌の非病原力(AVR)遺伝子を単離し、AVR遺伝子産物の宿主標的因子を同定することにより、罹病性遺伝子を獲得することを目的に研究を行った。いもち病抵抗性外国イネ系統(Ib3)が持つ新規のいもち病抵抗性遺伝子Piasの単離に成功した。Piasは2つのNLR(NBS-LRR)型遺伝子(Pias-1, Pias-2)が協働することで抵抗性を誘導するペア抵抗性遺伝子であることを明らかにした。さらに、Piasの単離は次世代シークエンサーを活用し、少ない材料で迅速に有力な抵抗性遺伝子の候補遺伝子を選抜できる「RaIDeN」法を独自に開発し達成した。本手法は、特定の基準配列を必要としないことから、植物種を選ぶことなく迅速に抵抗性遺伝子を同定できるため極めて有用性が高い手法と考える。また、Piasを持つ系統に対して感受性を示すいもち菌株(AVR-Piasを持たない)とAVR-Piasを持つ菌株の全ゲノム連関解析と発現解析によってAVR-Piasの単離に成功した。AVR-Piasは、91アミノ酸からなる遺伝子であった。今後、PiasとAVR-Pias間の相互作用機構の解明等に研究を発展させたい。
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