研究実績の概要 |
そうか病抵抗性が極強のユキラシャと弱のながさき黄金の雑種後代180系統から、平成29-30年の評価結果に基づき選抜した抵抗性強系統群と弱系統群を各20系統について、前年度にデータを取得した塊茎肥大初期の塊茎における共生微生物の多様性解析および葉における核磁気共鳴法によるメタボロミクス解析の結果の解析を行った。 共生微生物の多様性解析の結果、抵抗性強系統群およびユキラシャでは、抵抗性弱系統群およびながさき黄金に比べて、Shannon’s indexおよびobserved-speciesが高く、共生微生物の多様性の高さとそうか病抵抗性に相関があることが示唆された。また、抵抗性強系統群およびユキラシャではCytophagales目の細菌が有意に多いなど、抵抗性強系統群と弱系統群の間で複数の細菌群量に差が見られた。メタボロミクス解析からは、19種類の代謝物含量を抵抗性強系統群と弱系統群の間で比較した結果、複数の有機酸含量が両者の間で有意に異なっていることが明らかになった。 ユキラシャとながさき黄金について、塊茎肥大前のストロンおよび肥大初期の塊茎からRNAを抽出し、RNA seq解析により遺伝子発現を比較した。肥大開始前ではユキラシャで2倍以上発現が上昇していた物が1,412遺伝子、2倍以上減少していた物が2,505遺伝子検出された。肥大初期ではユキラシャで2倍以上発現が上昇していた物が1,928遺伝子、2倍以上減少していた物3,497遺伝子が検出された。これらの結果から、ユキラシャとながさき黄金の間では多くの遺伝子発現に差が見られ、それらの結果、代謝物量や共生微生物相に変化が生じ、そうか病抵抗性に違いが見られる可能性が示唆された。
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