研究課題/領域番号 |
17K15216
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
仲田 麻奈 名古屋大学, 高等研究院(農), 特任助教 (70623958)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | イネ / 土壌水分変動 / QTL |
研究実績の概要 |
世界のイネ生産量の大部分を占める熱帯アジアでは、灌漑設備が整備されていないため、雨のみに依存してイネ を作る天水田栽培が広く行われている。本研究は、天水田の最大の特徴である土壌水分変動に焦点をあてて、これまでに明らかになっていない、土壌環境ストレスに対する根の外部形態変化と内部組織構造変化、そのつながりに注目した、天水田での適応性向上に必要な根系形質を同定することを目的として実施する。 本年度は、材料に、農業生物資源研究所イネゲノムリソースセンターが提供している、ササニシキ/ハバタキ 染色体断片置換系統群 39系統(S/H CSSL39系統)のうち、土壌水分変動条件において、一貫してササニシキとくらべて地上部生育、根系発育が優れるCSSL39に注目した。ササニシキ、CSSL39、F2マッピング集団を用いて、ポリカーボネートチューブを用いた土耕条件で、土壌中に硬盤層を想定した圧縮土壌層を設け、土壌水分変動処理をして上記の材料を栽培した。その結果、土壌水分変動条件においてCSSL39はササニシキとくらべて有意に総根長が大きく、とくに圧縮土壌より下の土層に存在する根長がササニシキの3.5倍大きかった。また、同条件で総根長と圧縮土壌より下の根長に関わるQTLが12番染色体上長腕の同一箇所に検出された。さらに、上記の外部形態変化とあわせて、CSSL39は、根の通気組織と厚壁組織層の発達が大きい傾向があったが、ササニシキとの有意な差は確認されず、観察する部位を慎重に選択した上で再評価する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ポリカーボネートチューブを用いた根系評価方法がほぼ確立でき、マッピング用の材料の作成も順調に進んでいるため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、非破壊連続的に根系発育を追跡する方法として提案した、ハンディースキャナーを用いた根系評価方法について、画像が不鮮明であるなど改善すべき点がいくつかあり、早急に解決できるよう装置の改良を試みる。 あわせて、昨年度より実施しているフィリピンの天水田圃場を対象とした調査研究の結果をまとめ、イネ生育期間中の土壌環境ストレス要因に関する情報を収集し、そこから抽出されたストレス要因を対象に根系形質評価を進めていく。次年度以降は、比較的強度な乾燥ストレスと窒素施肥量の違いに注目し、それらが根の外部形態および内部組織構造特性にどう作用するのか、定量的に明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当該年度で、急遽購入が必要となった物品(アングルローター5mlチューブ用)が残額が少なく購入できなかったので、翌年度分とあわせて購入した。
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