本年度は、昨年度検討した市販の家庭用ハンディースキャナーを用いたイネ根系の非破壊的画像解析手法が、イネ根系のQTL解析にも有効であるかどうかを検討した。あわせてイネ根系の内部形態を基部から根軸に沿って評価することで、外部形態変化と内部組織構造変化との関わりについて調べた。ササニシキ/ハバタキ 染色体断片置換系統群 39系統(S/H CSSL39系統) のうち、CSSL439にササニシキを戻し交配してBCF2を用いて、土壌水分変動に対する根系応答を調べた結果、第12番染色体上に複数のQTLが検出された。一方で、サンプリングによる実測値の評価から検出されたQTLとハンディースキャナーを用いた非破壊的評価から検出されたQTLの座上位置が異なっていた。問題点として、スキャナーで取得した画像の背景が均一でなかったこと、そのことによる2値化時の閾値設定にばらつきが生じたことが考えられる。これらを改善した上で、非破壊的画像解析手法の確立を目指したい。 また、外部形態変化と内部組織構造変化は、種子根のような齢の進んだ根と比較的齢が新しい根との間に大きな違いが見られ、さらには、基部側と根端側においても違いが観察された。とくに通気組織が増加する部位と側根が発生または伸長する部位が異なっていたことから、外部形態変化と内部組織構造変化は、必ずしも同じ部位で同調しておらず、土壌環境条件にあわせて変化することが示唆された。 フィリピンで実施した天水田調査研究結果より、土壌環境、気象要因、収量のデータを一通りまとめ、栽培環境と品種の最適な組み合わせを提案することができた。
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