地下水位の低下や農業用水の汚染による水資源不足は年々深刻化している。「間断灌水法」は、農業用水の消費量が特に多い水稲栽培において有効な節水栽培技術であるが、再灌水の遅れに伴う土壌の乾燥発生がしばしば収量減少の原因となっている。本研究では、軽度の乾燥条件下での発揮が報告される「根系発育の可塑性」に着目し、根系発育の可塑性発揮が最大になる再灌水時の土壌の乾燥程度を土壌栄養条件にも着目しながら明らかにしてきた。 報告者は本研究課題において、各個体の土壌水分をより高精度で制御するために1/5000 aワグネルポットを用いて栽培試験を実施し、各ポットの土壌水分ポテンシャル(SWP)をセンサーで直接測定することで再灌水判断を実施した。評価結果の再現性検証や新たな評価項目の検証にはより多数のポットを用いた栽培評価が必須であり、その実現にはSWP測定における省力・省コスト化、精度向上の両立が必要である。それらの両立を実現するには従来のSPWセンサーに比べて安価で入手可能な重量センサーの活用が望ましいと考え、2022年には一連の栽培試験結果ならびに2021年度に報告した根新鮮重の評価方法を活用した上で、「栽培ポット重」を変数としたSWP校正式の確立を目指した。検証結果より、「栽培ポット重」を変数としたSWP校正式は供試水稲品種の生育と共に横軸右方向に移動し、その移動量はSWPが低下開始してから再灌水評価基準に達するまでの「栽培ポット重」の変化量を超えた。さらに、最終サンプリング時(葉齢約13)における根新鮮重は茎葉新鮮重を上回った。これらの結果から、①校正式を継続的に有効とするには茎葉ならびに根新鮮重の定量評価を踏まえて校正式を自動補正する必要があること、②根新鮮重は茎葉新鮮重に比べて校正式の補正量に占める割合が大きい可能性があること、以上2点が示された。
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