平成29~30年度の研究において、ササゲ近縁野生種群60系統を対象とした乾燥および湿害耐性のスクリーニングによって乾燥、湿害の両方に耐性を示す3系統を選抜した。令和元年度は、この中から特に優れた耐性を示した2系統について、耐性に関わると考えられる根の応答性の違いを調査した。まず初めに、栽培種を用いて乾燥および湿害処理の開始から定期的に根のサンプリングを行い、形態的な応答に違いが生じる時期を調べた。その結果、処理開始から1週間で顕著な違いが見られた。これに基づき、4系統を3反復、各4個体の計12個体ずつ乾燥条件、湿害条件、および対照条件(好適水分条件)で栽培し、1週間後に地上部より4-5cmの間の主根を採取した。採取後、直ちに固定液に浸潤し、脱気処理を行った。その後、ハンドミクロトームで作成した切片をサフラニンで染色し、デジタルマイクロスコープを用いて断面組織の画像データを取得した。得られた画像の解析から、断面積に対する維管束と皮層の比率、および通気組織の発達程度を評価した。その結果、選抜した野生種では乾燥条件下における維管束の比率および湿害条件下における皮層の比率が栽培種よりも高いことを明らかにした。一方、湿害条件下では通気組織とみられる部位の発達も観察されたが、その程度は栽培種の方が顕著であった。栽培種に比べ、選抜した野生種では乾燥および湿害条件に応答して根における維管束と皮層の比率をより柔軟に変化させていた。通気組織の発達はこの形態的変化を補うための応答であり、湿害耐性において主要な役割を果たすものではないことが示唆された。また、選抜した野生種と栽培種の交雑を行い、その後代集団を作成した。今後、この集団を使って根の応答に関する遺伝解析を進める予定である。
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