SSRマーカーを用いてTH3・横山間で異なる増幅断片長を示すマーカーを選抜し、増幅断片長と数塩基の反復の回数を調査した。これらのマーカーをF2系統群中で低温要求量の多い系統と少ない系統各5系統ずつの計10系統においても同様の調査を行った。用いたマーカーはリンゴにおいて低温要求性に関与する遺伝子座の存在が示唆されている第9染色体上に焦点を置き、ニホンナシに加え、セイヨウナシ、リンゴ由来のものを54マーカー供試した。 54マーカー中14マーカーにおいて横山、TH3の両方で増幅断片が検出され、その中で数塩基の反復が確認できたのは11マーカーであった。数塩基の反復の回数は横山、TH3間では差が確認されたが、低温要求量の異なるF2系統群10系統の間では差が確認されず、今回用いたマーカーでは低温要求性に関与する遺伝子座の同定には至らなかった。今後はF1系統群での検討や、未だ供試していない9番染色体上のマーカーに加え、他の染色体においても調査を行っていく必要がある。 さらに、中間母本の候補であるAF1系統群18系統についてCU600時に葉芽が5節連続着生した枝を5本程度採取して水挿し加温処理を行い、葉芽の発育指数を調査した。栽培品種で最も低い低温要求量を示すニホンナシ品種‘豊水’ではCU600の不十分な低温積算では発育指数がH29年度では2.0、H30年度では2.7と低い値であった。AF1系統では‘豊水’よりも有意に高い発育指数を示す系統がH29年度では9系統、H30年度では6系統で確認でき、二ヵ年を通して‘豊水’より有意に発育指数の高いAF1No.17、38、39、42、43、45が少低温要求性を有していると考えられた。また全てのAF1系統の発育指数が親の‘秋栄’とF1No.74の発育指数の間に広く分布した。低温要求量の多少の決定にはQTLが関与することが報告されており、今回の実験においてもQTLの関与が示唆される結果となった。
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