本研究の植物材料であるキルタンサスでは、突然変異育種に有用な重イオンビーム変異誘発技術を用いることで、本来2つ形成される精細胞が、分裂前の雄原細胞に似た非還元性の1つの精細胞となることが明らかとなった。この雄原細胞様精細胞の受精過程を明かするために、重イオンビームを照射した花粉を人工授粉し受精後の胚および胚乳を調査したところ、胚を形成しないが胚乳のみを形成する異常な胚嚢が観察された。卵細胞と胚乳の核DNA量の相対値から、異常胚嚢形成は雄原細胞様精細胞が中央細胞の極核と受精することで形成されることが示唆された。今後、この受精現象を園芸作物の育種に利用する予定である。
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