研究課題/領域番号 |
17K15227
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
東 未来 日本大学, 生物資源科学部, 助手 (80783414)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ダリア / 日持ち / 老化 / 切り花 / エチレン / 糖質 |
研究実績の概要 |
本研究はダリアの花の老化メカニズムを明らかにすることによって、エチレン非依存的に老化する切り花の日持ち向上を目的とした。平成29年度は、(1)小花実験系の確立、(2)花の老化時の糖質の調査、(3)花の老化に関与する遺伝子の探索を行った。 (1)ダリアは小花が集合して一つの花を構成している頭状花序であるため、小花を一つの花として扱い花の寿命を検定する小花実験系の有効性を検証した。12品種のダリアについて検証したところ、花序全体で老化に要する日数が長い傾向にある品種は小花単体であっても長い傾向にあり、小花実験系が有効であることが示された。これによって、実験材料と解析スペースの省力化が可能となった。 (2)エチレン以外の花の老化要因の一つには糖質不足が挙げられる。そこで、10品種のダリアの花について糖質を調査したところ、全ての品種でグルコースとフルクトースが高い値で検出された。糖質量の変化を詳細に調査するため、2品種のダリアで外側の小花と内側の小花に分け、糖質の調査を行った。外側の小花では、グルコースとフルクトース含量が採花2日後から減少したのに対し、内側の小花ではこの減少は見られなかった。ダリアの花は外側から順に萎れるが、花序内での糖質の競合が花の外側からの老化の一因である可能性が示された。 (3)エチレン非依存的に花の老化を促進する転写因子としてNAC転写因子ファミリーのEPH1遺伝子がアサガオで報告されている。ダリアにおいても同様の機能を持つ転写因子があることを推測し、NAC転写因子のディジェネレートプライマーと老化ステージのダリアの花のcDNAを用いてPCRを行い、シーケンス解析を行った。その結果、複数のNAC転写因子の部分配列が得られた。現在、全長配列のクローニングと、ダリアの品種別、花のステージ別の遺伝子発現解析により、老化に関与するNAC転写因子の同定に取り組んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度は、実験材料と解析スペースの省力化のため(1)小花実験系を確立すること、小花における糖質の移行と老化の関連性について検証するために(2)小花の糖質濃度を測定すること、(3)花の老化に関与する遺伝子の探索を行うことを計画していた。 (1)小花実験系の確立では、老化に要する日数を花序全体の場合と単離した小花の場合で調査し、小花実験系の有効性を評価した。12品種のダリアで調査した結果、花序全体で老化に要する日数の長い品種では小花でも長く、花序全体で老化に要する日数が短い品種では小花においても短い傾向にあり、小花実験系が有効であることを明らかにした。実験材料と解析スペースの省力化を可能としたため、当初の計画通りに進んでいる。 (2)ダリアの花は外側から順に萎れることから、外側から内側の小花へと糖質が移行すると推測し、平成29年度の実施計画では小花における糖質の濃度測定を計画していた。10品種のダリアの小花に含まれる糖質を調査したところ、全ての品種においてフルクトースとグルコースが高い値で検出された。さらに2品種のダリアで、外側の小花、内側の小花について日数別の糖質の調査を行ったところ、外側の小花は採花後2日後から糖質の濃度が減少したのに対し、内側の小花は糖質が採花後4日目まで若干上昇した。これらの結果が得られたように、糖質の調査についても当初の計画通りに進んでいる。 (3)エチレン非依存的な花の老化を促進する遺伝子として報告されているアサガオのNAC転写因子と、同様の機能を持つ遺伝子をダリアで探索することを計画していた。平成29年度においては、アサガオのNAC転写因子を参考に作成したディジェネレートプライマーを用いてPCRを行い、ダリアのNAC転写因子の部分配列が複数特定された。 以上のように、ほぼ計画書の通りに実施されており、研究はおおむね順調に進行している。
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今後の研究の推進方策 |
次年度も研究計画通りに実験を遂行する。 平成29年度には、ダリアの花の老化ステージで発現するNAC転写因子が複数得られた。平成30年度には、得られたNAC転写因子の部分配列からRACE法によって全長配列を決定する。配列決定後には、それぞれのNAC転写因子の発現解析を花のステージ別に行い、花の老化に伴って上昇するNAC転写因子を特定する。 エチレン非依存的な花の老化を示す花きはプログラム細胞死によって老化が制御される場合がある。そこで、花の老化時にプログラム細胞死が起きているのかをDNAの断片化の検定等を行うことによって解析する。 平成29年度に行った実験では、ダリアの花は老化時に、フルクトースとグルコースが減少すること、糖質処理を行うことによって退色の抑制、新鮮重減少の抑制が見られたダリア品種が存在することを明らかにした。平成30年度には、糖質処理時のNAC転写因子発現の比較やプログラム細胞死の解析を行う。
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