ダリアは主要花き品目になりつつあるが、花の日持ちの短さが欠点とされている。ダリアの観賞期間を延長するためには、花の老化機構を明らかにし、花の日持ちを延長する新たな技術や品種を開発する必要がある。多くの花き品目において、花の老化にはプログラム細胞死(PCD)が関与することが知られている。本年度は、(1)ダリアの花の老化においてもPCDが関与しているのかを解析するとともに、(2)花の老化に関連する遺伝子の探索を行った。 (1)PCDの解析には、‘かまくら’,‘黒蝶’,‘ポートライトペアビューティー’,‘ミッチャン’、‘ムーンワルツ’を用いた。これらの品種について、開花後も株付き状態を維持した(intact)花の日持ちを調査したところ、‘かまくら’は開花後4日程度で外花弁が萎凋したのに対し、‘ミッチャン’では開花10日後も萎凋が確認されず、10日目以降に落弁する傾向にあった。この際に、‘かまくら’では開花後2日程度でPCDが開始していたのに対し、‘ミッチャン’ではPCDが起きていなかった。他の3品種は開花後5~8日程度で外花弁の萎凋やPCDが確認された。これらの結果から、intactの花でも日持ちに品種間差があり、花弁の萎凋とPCDにはある程度の相関があることが明らかとなった。 (2)PCDおよび花の老化を誘導する遺伝子を探索することを目的とし、蕾から萎凋に至るまでのステージ別にRNA-seq解析を行った。RNA-seq解析には、‘かまくら’のPCDが起こる前のステージである開花2日前、開花当日、PCDが開始する開花後2日目、花弁の萎凋が確認された開花後8日目の各花の外花弁を用いた。PCDに関連する転写因子としてはNAC転写因子が知られているが、今回のRNA-seq解析ではNAC転写因子と推定される配列が114種類得られ、この中には花の老化に伴って発現が上昇するものも存在した。
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