研究課題/領域番号 |
17K15228
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
尹 永根 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 放射線生物応用研究部, 主任研究員(定常) (50609708)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 光合成産物 / RIイメージング / 転流動態 |
研究実績の概要 |
H30年度は、前年度に確立したRIイメージング実験系を用いて、異なる葉位から果房内の各果実への光合成産物の転流様式の可視化を実施した。第2果房の直上葉を中心に、その上下2枚の葉それぞれ計5枚に順次11CO2を投与し、RIイメージング技術を用いて第2果房内の各果実への11Cで標識された光合成産物の移行様式を撮像した。その結果、光合成産物は11CO2を投与してから約70分後に果柄に到達し、その後徐々に果実へ輸送された。しかし、直上葉から第2果房への光合成産物の移行は確認されなかった。一方、直上葉より上下2枚の葉それぞれ計4枚から第2果房への光合成産物の輸送は果房内の各果実の着果位置によって異なることが分かった。果房内の果実に対して、直上葉より上2枚目の葉は主に偶数列に、直上葉より下1枚目の葉は主に奇数列に、光合成産物の輸送を担っており、概ね2枚以上の葉が一つの果実に対して光合成産物の供給を担当していることが分かった。また、果房より上位の葉から根に向かう光合成産物の輸送経路は根と果実の両方向に分かれているのに対し、果房より下位の葉から上方向へ向かう光合成産物の輸送経路は果房のみであり、果房を超えることはなかった。これらの画像データを基に、トマト全身の各葉位と果房間の光合成産物の篩管輸送経路のネットワークの分布模式図を作成したところ、一つの果房に対して少なくとも4枚の葉が光合成産物の供給を担っていることが明らかになった。 また、CTを用いて果実の内部の篩管の走行配列を撮像したところ、果柄から胎座、中果皮、子室内の種子などへ至るまで発達した維管束の配列を可視化することができた。しかし、茎の中の維管束を対象にした場合、ほかの組織とのコントラストが困難だったため、維管束の明確な画像を取得することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
11CO2を製造するためのサイクロトロンが故障したため、RIイメージング実験の回数が計画より大幅に減少した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に未達成した各葉位から果房内果実への転流様式の評価のためのRIイメージング実験を継続して行うとともに、これらイメージングデータを基にサンプリングしたトマト果実(果柄)を用いてRNA-Seqを行う。また、果実発達の経時的変化に伴う果実間の光合成産物の転流動態の相互関係を定量的に評価する。得られたすべてのデータを統合し、数理的解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
RIイメージング実験の減少にともなう消耗品費の支出が減少した。次年度のRIイメージング実験用の消耗品の購入に使用する。
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