研究課題
活性酸素種(ROS)は,植物が病原体の侵入に対して効果的な免疫応答を示す上で重要なシグナル分子である.一方で,研究代表者らの最近の研究から,ウイルスが宿主ROS産生酵素RBOHを介して積極的に宿主細胞中のROS産生を促し,増殖に利用するという新たなウイルス増殖戦略が明らかとなり,植物-病原体間相互作用におけるROSの多面性が浮き彫りになってきた.しかしながら,いずれの場合においてもROSの下流に関する知見は不明瞭な点が多く,詳細な解析が必要である.本研究では,ROSを介したRCNMVタンパク質の翻訳後修飾制御に着目することで,ウイルス増殖におけるROSの意義を分子レベルで理解することを目指している.本目的を達成するために,red clover necrotic mosaic virus(以下,RCNMV)をモデルウイルスとして計画を進めた.昨年度に引き続き,RBOH阻害剤あるいはスーパーオキシドアニオン除去剤存在下におけるウイルス複製酵素タンパク質の翻訳後修飾の同定を試みたが,特異的な翻訳後修飾の同定には至らなかった.しかしながら,RCNMV複製酵素タンパク質は宿主細胞中で種々の翻訳後修飾を受けていることを明らかにすることができた.さらに,これら翻訳後修飾のウイルス増殖における機能解析から,ウイルス増殖に対して負に働く翻訳後修飾を同定することができた.また,RCNMVが感染細胞においてROS産生を誘導するために必要な宿主足場タンパク質RACK1(receptor for activated C kinase 1)の同定に成功した.RACK1の機能解析を通じて,RCNMVによるROS産生誘導の上流に関する分子知見を深めることができた.
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
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