研究課題/領域番号 |
17K15231
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
出崎 能丈 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 助教 (80711647)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | MAMP / キチン / ユビキチンリガーゼ / リン酸化 |
研究実績の概要 |
本研究課題では、我々が同定したシロイヌナズナキチン受容体CERK1と相互作用するユビキチンリガーゼPUB4のキチンシグナル伝達における機能を明らかとすることを目指している。 昨年度までの研究でpub4変異体においてキチン未処理の状態から、野生型と比べサリチル酸が高蓄積していることが示された。そこで、サリチル酸合成遺伝子の変異体との二重変異体を作出した。この二重変異体においてpub4単独変異体で見られたサリチル酸の蓄積の有無について検討、サリチル酸の異常な蓄積が消失したことを確認した。次に、この二重変異体に対してキチン処理、各種防御応答指標を評価した結果、これまでpub4単独変異体で見られていた、MAPK活性化や防御応答関連遺伝子の発現誘導の亢進がサリチル酸の高蓄積によるものであると示された。一方で、活性酸素生成の低下は二重変異体でも維持され、PUB4がキチンシグナル伝達の正の制御因子であることが明確となった。 また、PUB4のCERK1によるリン酸化を介した活性化機構に関してはPUB4リン酸化部位変異型リコンビナントタンパク質を調製、in vitroユビキチン化解析を行った。その結果、PUB4がリン酸化によって活性化することを強く示唆する結果を得た。 PUB4のユビキチン化ターゲット候補として解析してきたPUB4 interacting protein1(PIP1)に関してはPUB4とPIP1/2/3の重複変異体を作出し、応答解析を進めたが、この方法で関連性を示すことは困難であった。またin vitroユビキチン化解析においてもPIP1へのPUB4からのユビキチン化は検出もできなかった。このことからPUB4はPIP1を直接ユビキチン化するのではなく、これら分子間に更なる因子が存在する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究実施計画に基づき研究を進め、おおむね期待どおりの結果を得ている。 これまでのpub4変異体を用いた機能評価では解釈の難しかった、キチンシグナル伝達におけるPUB4の機能は、サリチル酸合成遺伝子との重複変異体を用いた解析を行い、PUB4がキチンシグナル伝達の正の制御因子であることを示すことができた。 また、PUB4のリン酸化部位を変異させたタンパク質を調製できたことで、PUB4がCERK1によるリン酸化によって活性化することが、さらに強く示唆された。 PUB4のユビキチン化ターゲットに関しては、当初想定した因子(PIP1)を直接ユビキチン化しないことが示された。しかし、周辺の知見からPUB4とPIP1の間に存在すると考えられる候補因子をすでに見出しており、この因子の解析の準備が進んでいる。また、網羅的な解析に向けた準備も進行しており、シロイヌナズナ中のユビキチン化タンパク質を免疫沈降によって精製する手法の確立が行えた。
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今後の研究の推進方策 |
PUB4の機能が明確になったことから、これについて論文として報告する。すでに原稿執筆を進めており、早期の発表を目指す。これに加え、研究の過程で構築した実験系に関する論文の公表も進める。 また、PUB4のCERK1からのリン酸化を介した活性化メカニズムに関しては、結果が蓄積してきている。今後はより明確に結果を示すために、CERK1とPUB4共存下の実験ではなく、リン酸化したPUB4を精製、この後に評価を進めたい。 PUB4ユビキチン化ターゲット候補は、当初とは異なる分子にシフトしている。しかし、すでにリソースから変異体を入手、相補個体の作出も進めている。また、in vitro実験の為のコンストラクトづくりの進めており、これまでの蓄積を踏まえ、解析を進める。さらに、網羅的な解析の為の準備もほぼ完了している。今年度前半には候補を得て、解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
ほぼすべての予算を執行したが、年度末および年度初めに必要となる試薬・消耗品が想定されたため、その購入予算として一部の執行を遅らせたため。成果発表のために参加する国際学会が最終年度にあるために、その旅費に一部の予算を措置する。
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