研究課題/領域番号 |
17K15233
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
佐藤 育男 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70743102)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | かび毒 / デオキシニバレノール / 微生物分解 / 生物的防除 / 赤かび病 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度に引き続き、デオキシニバレノール(DON)とニバレノール(NIV)の双方を代謝する新規分解菌の探索および、DON代謝酵素の取得を目的にDON代謝能変異株の作出を行った。環境試料からの新規分解菌の探索については、土壌懸濁液を調製し、微生物画分を濃縮したサンプルを用いて集積培養を行い、新たに1株のDON・NIV双方を分解できる細菌株を分離できた。一方、新規DON分解代謝酵素の同定については、前年度までに、DON分解細菌Nocardioides spp.の細胞抽出液中からの酵素活性の測定法を確立できなかったので、DON代謝変異株を取得し、NGS解析で変異箇所の同定および候補遺伝子を異種発現させることを目指すこととした。DON代謝能変異株の作出については、UV処理での変異条件の最適化を行い、変異処理後の約2000株のDON代謝能を調査した。その結果DON代謝能を失った株および初期段階で分解代謝が止まる株を計20株得ることに成功した。今後は、変異株のNGS解析を行い変異箇所を決定する。 当初予定していたポット栽培コムギを用いた赤かび病抑制試験については、供試していたコムギ品種農林61号の室内栽培では出穂に時間が掛かるため、矮性コムギ品種を用いることに変更した。矮性コムギ品種を栽培し、その種子を回収した。これを栽培・出穂させ、開花期のコムギへのDON分解細菌および赤かび病菌(Fusarium graminearum)の接種方法を確立した。今後、ポットスケールおよびガラス室での発病抑制試験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新規DON分解代謝酵素の同定について、DON分解細菌の細胞抽出液中からの酵素活性の測定法を確立できなかった。そこで、DON代謝変異株を取得し、NGS解析で変異箇所の同定および候補遺伝子を異種発現させることを目指すこととしたため、進捗が遅れている。 ポットスケールでの、発病抑制試験について、当初予想していたよりも、コムギの出穂に時間がかかり、出穂率も低かったので、コムギ品種を矮性品種に代えることとした。
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今後の研究の推進方策 |
DON分解細菌の細胞抽出液中からの酵素活性の測定法を確立できなかったので、DON代謝変異株を取得し、NGS解析で変異箇所の同定および候補遺伝子を異種発現させることを目指す。
DON分解細菌を用いた赤かび病の発病抑制機構については、前年度までに確立したpetri dish試験を用いて、病原性因子であるDONの分解に基づく発病抑制機構の存在を提示できたが、その他の抑制機構(抵抗性誘導・競合等)についても今後検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、参加を予定していた学会が中止となったため使用予定だった金額を繰越申請した。 繰越金については消耗品および英文校閲料・論文投稿料等に使用する予定である。
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