研究課題/領域番号 |
17K15235
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
三木 衣代 (米谷衣代) 近畿大学, 農学部, 講師 (50618593)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 環境DNAメタバーコーディング / 害虫管理 / 天敵 |
研究実績の概要 |
農生態系における害虫、土着天敵の調査は総合的害虫管理において重要である。しかし、微小な害虫や個体数が少なく移動性の高い天敵の調査は難しく、同定には分類の専門的な知識が必要である。そこで、本研究では、農業生産の現場において総合的害虫防除を効率的に進めるために、DNA解析技術(環境DNAメタバーコーディング)を活用することにより、害虫・天敵発生消長データの収集を可能にする基盤技術開発を目指している。環境DNAとは生物が環境中に放出し、残留したDNAの断片である。このDNAをメタバーコーディング技術と組み合わせることで、一度に大量のサンプルに含まれる複数種のDNA断片から網羅的に種を同定することが可能となる。しかし、この技術は環境DNAの回収が比較的簡単な水域での研究に用いられており、陸上の植物を食害する昆虫を対象にした研究はほとんどないのが現状である。 H29年度は、まず、植物上にいる害虫が残した環境DNAを回収する方法について検討した。DNAが回収できたかどうかは節足動物のバーコード領域であるCOI遺伝子領域を次世代シーケンサーで読むことで、検証した。作物として複数の野菜種とイネを利用することを計画していたが、1年目は野菜に注目して、実験を行った。野菜は形態および収穫部位の異なるキャベツとナスを選んだ。その結果、鉢植えのナス、キャベツおよび地植えのキャベツ上から植物を傷つけることなく害虫や天敵の環境DNAを回収することに成功した。検出した害虫・天敵はアブラムシ、ハダニ、コナジラミといった微小昆虫から、葉の中に潜るハモグリバエ、移動性の高い天敵のカマキリや害虫のバッタ、害虫に寄生する寄生蜂など、さまざまな摂食、行動タイプを含まれていた。このことから、想定していた以上に多くの種に適用できることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した実験はおおむね実行している。イネの実験のみできなかったが、2年目に行う予定であった、野外での自然に発生した害虫に対する検証を先に行ったため、(2)を選んだ。
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今後の研究の推進方策 |
1年目に予定していたイネから害虫の環境DNAを回収する方法の検討を行う。さらに、当初から予定していた食痕部位からの環境DNAの回収方法の検討も行う。また、重要害虫であるアブラムシやアザミウマを用いて、密度と検出されたDNAの配列数との関係を調べる。また、環境DNA の回収・検出可能期間を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
1年度目に実行する予定だったイネを対象とした実験を次年度に回したため、イネの管理にかかる費用、およびDNA分析経費が余った。しかし、2年目に実行するはずだった野外での検証実験を先に1年目に行ったため、イネの管理費分の予算が余った。繰り越した予算は2年度目にイネを対象とした実験を行うために土の購入や管理に必要な人件費等に当てる予定である。
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