アンモニア感受性遺伝子GS2と、研究代表者によって既に報告されているアンモニア感受性遺伝子NRT1.1が、同じ経路を介してアンモニア感受性を増加させるかを検証した。GS2とNRT1.1の二重破壊株を作成したところ、いずれの単独破壊株と比べても統計的に有意にアンモニア耐性が向上した。また、GS2およびNRT1.1いずれの破壊株においても、もう一方の感受性遺伝子の遺伝子発現レベルは低下しなかった。さらに、これらの破壊株で野生株と比べて顕著に発現が変化するマーカー遺伝子群のmRNAを階層クラスター解析したところ、GS2とNRT1.1の破壊株は異なるクラスターに分類された。これらの結果から、GS2とNRT1.1は独立の経路を介してアンモニア感受性を増加させると結論づけた。 前年度の解析では、アンモニア毒性培地においてシロイヌナズナ組織の酸性度の上昇およびプロトン排出量の増加が観察された。そこで本年度は、アポプラスト局在型pHプローブ蛍光タンパク質PM-Apoを用いて、共焦点レーザー顕微鏡によるアポプラストのpH測定を実施した。その結果、高アンモニウムイオン栽培したシロイヌナズナ子葉の表皮細胞のアポプラストでは、硝酸イオン栽培のものと比べて有意にアポプラスト領域のpHが低下することがわかった。また、アンモニア水を用いてpHを5.7から6.7に調整したアンモニア毒性培地でシロイヌナズナを栽培したところ、毒性の症状が軽減されるとともに組織の酸性度も低下した。これらはアンモニア毒性の原因が酸ストレスであるという前年度の結論を支持する。
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