研究実績の概要 |
本年度は、Pl(4,5)P2を調節する機構に関与することが推測されるタンパク質PCaP2について、PCaP2は根毛伸長過程においてどのような生理的役割をもつか解析した。植物細胞においてPCaP2がPI(4,5)P2と結合することを調べるため、PI(4,5)P2結合タンパク質との競合実験を行った。その結果、PCaP2が細胞膜上に発現することに伴いPI(4,5)P2結合タンパク質は細胞膜から脱離しサイトゾルに蓄積した。このことから、PCaP2タンパクは細胞膜上のPI(4,5)P2と結合し、その結果としてPI(4,5)P2結合タンパク質は細胞膜から脱離したことが考えられた。PI(4,5)P2と同様に細胞膜に蓄積することが知られるPI(4)Pについて競合実験を行ったところ、PCaP2はPI(4)P結合タンパク質とは競合しなかった。このことから、PCaP2はPI(4,5)P2と細胞膜上において特異的に結合することが明らかとなった。次に根毛伸長過程におけるPCaP2の生理的意義を調べるため、PCaP2を根毛細胞において過剰に発現させその影響を調べた。その結果、PCaP2を過剰に発現した根毛細胞ではエンドサイトーシスのマーカーとして用いられるFM4-64の取り込みが抑制されることが分かった。PCaP2分子内のPI(4,5)P2結合領域であるN末端を欠失した改変PCaP2を過剰発現させた根毛細胞ではそのような影響は見られなかった。これらの結果から、PCaP2はPI(4,5)P2と結合することによりPI(4,5)P2を介したエンドサイトーシスに影響を及ぼすことが明らかとなった。以上の実験から、PCaP2はPI(4,5)P2と結合することによりPI(4,5)P2シグナルを負に調節するという結果を得た。前年度と本年度の研究結果を論文にまとめThe Plant Journal誌に投稿し採択された。
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