研究実績の概要 |
世界の耕地面積の約3-4割は酸性土壌である。酸性土壌ではアルミニウム(Al)やマンガン(Mn)などの金属毒性により作物の生産性が著しく低下している。ソバは酸性土壌に強いだけでなく地上部にアルミニウムやマンガンを集積する特徴がある。このようなソバのアルミニウムやマンガンの吸収、集積の分子機構を明らかにするため、本研究ではソバのNrampファミリーに着目し研究を進めた。 Nrampファミリーは生物界に広く存在し、金属イオン(Al, Fe, Mn, Cdなど)を輸送することが報告されている。ソバのRNA-SeqデータをもとにNrampファミリーを検索したところ、ソバには7つのNramp遺伝子が根または葉で発現していた。それぞれの遺伝子について絶対定量による発現量の比較を行ったところFeNramp4, 5, 6は主に根で発現しておりFeNramp1, 2, 3, 7は根と葉の両方で発現していた。根における金属欠乏による発現応答について調べたところFeNramp1の発現量は鉄欠乏に応答し、FeNramp5の発現量はMn欠乏時に増加していた。さらにレーザーマイクロダイセクションを用いた根の組織特異的な発現解析からFeNramp1, 2, 5は根の全体で発現することが明らかとなった。ソバのNrampタンパク質の輸送基質を特定するために酵母にそれぞれの遺伝子を発現させ輸送活性測定を行った。その結果、ソバのNrampファミリーにはアルミニウムの輸送活性を示すものはなかったが、FeNramp5を発現させた酵母にはマンガンとカドミウム輸送活性があり、FeNramp1には鉄の輸送活性があることを明らかにした。さらに、シロイヌナズナのマンガン吸収変異体atnramp1 にFeNramp5を発現させるとその表現型を相補する。これらの結果からソバのマンガン吸収はFeNramp5が担うことを突き止めた。
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