研究課題/領域番号 |
17K15240
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
筧 雄介 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 特任助教 (50636727)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | トマト / 維管束 / サイトカイニン / 窒素 |
研究実績の概要 |
今年度はトマト育苗における養液濃度と茎維管束面積発達速度が相関する現象について、養液中のどの元素が主に影響を与えているかを明らかにするため、全体のイオン強度を一定にした中でそれぞれの多量栄養素の濃度を変動させて生育への影響を観察した。28日間水耕栽培したトマトの草丈、茎径、SPAD値を比較した。いくつかの茎の横断切片を観察し、茎径の自乗(×3.14)と維管束面積が比例することを確認した。根の広がり程度の違いにより養液窒素濃度の与える影響が異なることが分かったため、36穴セルトレイ内へ根の発達を制限した条件で試験を行った。中程度窒素・高窒素条件で栽培したトマト苗を比較したところ生育初期には各栄養条件間で生育の差は見られず、17日目以降に生育の差がみられ始めた。この時の遺伝子発現解析を行い、茎径(木部の発達)に差が出る直前・差が出た直後・差が出た後の3通りに分けて、遺伝子発現データをまとめた。その結果、生育に差が出る直前に、サイトカイニン合成遺伝子(IPT)と誘導性遺伝子(typeA-RR)発現量が中程度窒素と比較し、高窒素条件で有意に上昇していた。 このことからトマト幼苗18日目以降の養液濃度による維管束発達の違いには主に窒素濃度が影響し、サイトカイニン合成量上昇を介した下流の応答がかかわっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究に用いた実験条件では子葉の直下の茎系を測定することにより非破壊的に維管束の成長得度を観察できることが分かり適切な実験系を確立することができた。トマト育苗期における異なる栄養条件下でサイトカイニン応答性遺伝子、オーキシン応答性遺伝子、ブラシノステロイド応答性遺伝子、窒素栄養・オーキシン・ブラシノステロイドに共通して応答し、維管束で発現がみられるbZIP転写因子の発現を計画通り確認した。また、このbZIP遺伝子とシロイヌナズナにおけるホモログについて発現抑制およびbZIP:GFP融合タンパク質の過剰発現するベクターを構築し、シロイヌナズナに形質転換を行った。
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今後の研究の推進方策 |
最近の報告で形成層のサイトカイニン量の上昇は、隣接する導管分化領域のオーキシン量の上昇と導管面積の増大を引き起こすことが示唆された。この報告とこれまでの実験から、窒素栄養とオーキシンに応答するbZIP遺伝子について、共発現解析と遺伝子近傍上流配列のG-box配列の保存性などから制御下にある遺伝子として導管の細胞壁の発達に関わる遺伝子AtXTH12, AtXTH13を予測している。これらの遺伝子についてはプロモーターレポーターアッセイのためのベクターを構築済みなので、bZIP発現抑制、過剰発現形質転換体における発現制御とbZIP転写因子がこれらのプロモーターに直接結合して制御を行うかどうかを調べることにより、養液濃度が維管束面積を増大させる一連の分子メカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は100円以下であり、おおよそ計画通り支出している。
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