研究課題/領域番号 |
17K15242
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
片山 琢也 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (70792191)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 糸状菌 / 細胞融合 / MAPキナーゼ / 転写制御 |
研究実績の概要 |
本課題ではAspergillus oryzaeにおいて細胞融合に必須であるMAPキナーゼAoFus3及びそれと相互作用するタンパク質AoSte12、FipCの解析を行った。 これまでにAofus3、fipC、Aoste12が細胞融合関連遺伝子の転写を制御することで、細胞融合を調節することを示唆していた。本年度はAoste12高発現により細胞融合関連遺伝子のmRNAレベル、細胞融合効率が共に低下することを示し、AoSte12が細胞融合を負にも制御することを示唆した。さらにfipC破壊株における細胞融合欠損、細胞融合関連遺伝子のmRNAレベルの低下がAoste12の破壊により抑圧されたことから、AoSte12による細胞融合関連遺伝子の負の制御をFipCが抑制することが示唆された。Ste12オルソログが細胞融合に必要な遺伝子を抑制すること、FipCがその機能を抑制することは酵母における細胞融合制御機構とは明らかに異なっており、糸状菌特有の細胞融合制御機構を明らかにする上で重要な知見であると考えられる。 本年度、FipCの機能やその制御を明らかにするため、FipCにTAPタグを融合したタンパク質を生産する株を作製し、TAP解析によりFipCと相互作用するタンパク質の同定を試みた。その結果、AoFus3やAoSte12を含む複数のタンパク質を同定することができた。次年度において、これらのタンパク質の細胞融合への寄与についての解析により糸状菌における細胞融合制御機構の解明に繋がることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では遺伝学的な解析に重点をおいて解析を行い、FipCとSte12の関係、機能について重要な知見を得ることができた。また、計画していた通りにFipCと相互作用する候補タンパク質の同定に成功した。以上のことを鑑み、本研究課題は順調に進展していると判断できる。
|
今後の研究の推進方策 |
Aofus3、fipC、Aoste12の遺伝学的な解析を進めることで、三者の関係について検討する予定である。具体的には各遺伝子破壊株におけるfipCやAoste12の高発現の影響について解析することで、これらの遺伝子の遺伝学的な上位下位を決定できると考えられる。また、AoFus3の機能についてより詳細に検討するため、すでに取得しているAoFus3が高度に活性化される株を用いた細胞融合の解析を行う。さらに、三者のうちの一つが欠損した場合の残り二つのタンパク質の結合状態や、それぞれのタンパク質の翻訳後修飾についての検討といった解析を行うことで、それぞれのタンパク質レベルでの制御メカニズムの解明にも取り組む予定である。 本年度の解析においてFipCと相互作用する候補タンパク質を複数同定できた。今後FipCとの相互作用を免疫沈降法により確認し、相互作用が確認できたタンパク質についてそれをコードする遺伝子の破壊株や高発現株を作製して細胞融合への影響について検討する。さらに細胞融合に関連する機能を持つ遺伝子についてはfipCとの二重破壊株やfipC高発現株での該当遺伝子の破壊によりFipCとの関係について検討を行う。 以上の解析を通して糸状菌特有の細胞融合を誘導する転写制御機構を明らかにする。
|