有機溶媒耐性菌Kocuria rhizophila DC2201 で利用可能なシャトルベクターpKITE101およびpKITE301を構築し、K. rhizophila によるスチレン酸化酵素の異宿主発現を行った。作成した形質転換体を用いてスチレンのエポキシ化反応を行い、これらのシャトルベクターがK. rhizophila を宿主とするバイオプロセス構築に利用可能であることを実証した。また、これら2種のプラスミドが異なる複製保持機構をもち、その保持安定性も異なることを利用し、一方のプラスミドの複製保持をもう一方のプラスミドによって制御するサポートベクターシステムを構築した。これにより、両方のプラスミドを同時に導入しなければ形質転換できず、かつ片方のプラスミドが脱落させるともう片方のプラスミドも脱落する系が確立された。このシステムを利用し、K. rhizophila DC2201 のゲノムDNAをマーカーレスに破壊・改変することが可能なツールを開発した。実際に解糖系酵素遺伝子であるPGIおよびPYKを破壊し、それぞれの破壊株で酵素活性が大幅に低下ないし消失することが確認できた。 これまでの研究においてK. rhizaphila DC2201が高い有機溶媒耐性を示すことが明らかとなっており、その耐性機構の解明を試みた。培養時に有機溶媒で処理を行った菌体からRNAを抽出し、次世代シーケンスによる解析を行った。その結果、Two component システムからなるストレス応答因子やトランスポーターの発現上昇が確認された。さらに興味深いことに、マルトース生合成経路や糖転移酵素遺伝子の転写量の著しい上昇が確認された。この結果から、K. rhizophila DC2201は細胞壁の構成糖の組成を変化させることにより細胞壁の親水を高め、有機溶媒耐性を向上させていることが示唆された。
|