研究課題/領域番号 |
17K15250
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
松尾 洋孝 北里大学, 北里生命科学研究所, 特任助教 (70613694)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 深海sijyoukinn / PC screening / Sarcopodium属 / 細胞毒性 |
研究実績の概要 |
深海・地殻由来希少糸状菌を探索源とし、physicochemical screening を用いて新規化合物の探索を行った。深海・地殻由来糸状菌 280 株の 4 培地小スケール培養液を PC screening により解析した結果、FKJ-0025 株が生産する物質を新規物質と推定した。FKJ-0025 株を F38 培地で 3 L 培養後、培養液を酢酸エチルで抽出し、得られた酢酸エチル抽出物をシリカゲルおよび ODS カラムクロマトフラフィーにより精製した結果、2 つの新規化合物 (sarcopodinol A および B と命名) を取得した。核磁気共鳴装置、高分解能質量分析装置による構造解析の結果、sarcopodinol A および B はヒドロキシキノールを基本骨格とする化合物であることが分かった。Sarcopodinol A は、不斉炭素に結合する 2 級水酸基を有していたため、その絶対立体構造を改良モッシャー法によって解析した結果、絶対配置を R であると決定した。Sarcopodinol A および B の抗菌活性および細胞毒性試験を行った結果、sarcopodinol A は抗菌活性を示さなかったが、Jurkat 細胞に IC50 = 47 μg/mL で細胞毒性を示した。一方、sarcopodinol B は、HL-60 細胞、Jurkat 細胞、Panc1 細胞に対してそれぞれ IC50 = 37、47、66 μg/mL で細胞毒性を示した。この結果は、2017年度環境微生物系学会合同大会にて発表し、国際雑誌 Bioscience, Biotechnology, and Biochemistryに投稿、掲載が決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度の計画通り、physicochemical (PC) screeningにより深海由来糸状菌 FKJ-0025株から新規物質 (sarcopodinols A and B) を取得できたことからおおむね順調に進展していると判断した。今回、新規物質の単離源となった糸状菌はSarcopodium属に同定された。この属は陸上からはほとんど分離されず、深海あるいは海洋特有の糸状菌である。さらに、DNA解析の結果、新種の可能性が示唆された。このような希少糸状菌や深海由来糸状菌を中心に PC screening を行い、現在のところ上記物質の他、構造まで決定しているものを1 種 (生物活性未発見)、構造未決定のものを 1 種、取得済みである。また、土壌由来の糸状菌からもphysicochemical (PC) screeningにより新規物質を1種、取得した。構造を絶対立体構造まで明らかにし、各種活性評価をした結果、一重項酸素消去活性、抗菌活性を見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後も引き続き PC screening による新規物質の探索を行う。また、これまでに取得した新規物質については、様々な生物活性を評価し、強力な活性が見つかり次第、実用化の検討を行う。PC screening は化合物を取得してから様々な活性を評価するため、北里大学北里生命科学研究所内が保有するアッセイ系のみでは限界がある。そこで、外部の大学および研究機関に依頼し、活性評価を行う予定である。 糸状菌由来の新規物質探索では、主に炭素、水素、酸素のみから構成される物質が数多く単離され、バラエティーに乏しかった。そこで、今後はヘテロ原子を含む物質、特に含窒素化合物 (アルカロイド) の取得に力を入れる予定である。探索方法としては質量分析でプロトン付加体が偶数で観測される物質やドラーゲンドルフ反応で陽性を示す物質を中心に探索する。
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