研究課題
当初の計画通り、平成 30 年度は physicochemical screening による深海由来糸状菌を探索源とした新規含窒素物質の取得を目的に研究を行った。深海由来糸状菌培養液 1120 サンプルを TLC で展開後、含窒素物質生産菌の指標としてドラーゲンドルフ試薬を噴霧した。陽性スポットを示したサンプルに対し、LC/MS で分析し、含窒素物質の指標として、分子量が奇数となる物質を探索した。その結果、ペニシリウム属糸状菌 FKJ-0123 株および ペニシリウム属糸状菌 FKJ-0213 株が生産する物質を新規含窒素物質と推定した。ペニシリウム属糸状菌 FKJ-0123 株を米を主成分とする培地 5 kg で培養後、メタノールで抽出、各種クロマトグラフィーにより精製した結果、目的物質 (FKJ-0123C 物質) を 10.1 mg 得た。構造解析の結果、シンナモイル基を有するトリペプチドであると分かった。各種活性評価の結果、ヒドロキシラジカル消去活性が見出された。ペニシリウム属糸状菌 FKJ-0123 株は、きなこを主成分とする培地 6 L で培養後、メタノールで抽出、各種クロマトグラフィーにより精製した結果、目的物質 (FKJ-0213A 物質) を 11.6 mg 得た。構造解析の結果、既知物質 2 種がエステル結合を介して結合している新規含窒素であった。興味深いことに、構成される既知物質単独では細胞毒性を示さず、2 つの既知物質が結合して初めて細胞毒性を有することが明らかとなった。また、FKJ-0213A 物質取得の際、新たに見出した新規含窒素物質 FKJ-0213B 物質も取得することができた。構造解析の結果、aspergillazine 新規類縁体であると分かった。研究期間全体を通じて深海由来糸状菌 3 株から、計 5 種の新規物質の取得に成功した。
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BIOSCIENCE, BIOTECHNOLOGY, AND BIOCHEMISTRY
巻: 82 ページ: 1323-1326
doi.org/10.1080/09168451.2018.1467264