研究課題
本研究では、細胞内の1/4のMg2+をキレートするリボソームが、細胞内のMg2+濃度変化に対してどのような影響を受けるのかを検証するとともに、Mg2+濃度の恒常性維持に関与する可能性についても調査した。上記の目的を達成するため、枯草菌のMg2+取り込みと排出を人為的にコントロールし、Mg2+の過剰、または枯渇を誘導する実験系を確立した。さらにこの実験系をリボソーム量の少ない変異株(Δrrn8)でも実施し、Mg2+濃度変動の影響と細胞内リボソーム量との関係性を検証した。Mg2+過剰を誘導した場合、通常量のリボソームを含む野生株であっても増殖速度と細胞内翻訳活性の低下が観察されたが、Mg2+過剰をリボソーム量の少ない変異株でMg2+過剰を誘導すると、これらの影響はより顕著に観察された。1分子に170原子ものMg2+をキレートすることが可能なリボソームの少ない状況では、遊離Mg2+濃度が向上しやすいため、様々な影響が顕在化しやすいと考えられる。また、Mg2+過剰誘導時にはrRNAオペロンの転写量増加も認められており、細胞が多量のMg2+をキレートするためにリボソームを新規合成する機構の存在も示唆された。Mg2+の枯渇を誘導すると、細胞分裂による細胞内のMg2+濃度低下が起こり、細胞増殖が停止する。Mg2+枯渇誘導後、野生株では2.3倍程度まで増殖したものの、Δrrn8株では1.5倍程度しか増殖できなかった。リボソーム量の少ない細胞ではMg2+のストックが少ないため、早い段階で増殖不可能なレベルまでMg2+濃度が低下すると考えられる。さらに、Mg2+枯渇を誘導すると70Sリボソーム量が減少することが分った。これらの結果は、細胞がリボソームを分解することで遊離Mg2+を産出し、細胞内のMg2+恒常性を維持している可能性を示すものである。
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