前年度までに、アーキアの複数の種について、新たな染色体タンパク質の探索および機能解析を行うことでDNA結合たんぱく質Albaが染色体上で直径約10nmのファイバー形成に寄与していること、バクテリアのHUと相同なThermoplasma acidophilumの染色体タンパク質HTaが直径約6nmのビーズ構造を形成していることを示した。また、より高次な構造として、直径約30-40ナノメートルの粒子構造が染色体上に存在し、アーキアの染色体にはEuryarchaeotaとCrenarchaeotaという2つの主要な門に共通して、段階的な高次構造が存在することを明らかにした。また、増殖の進行に応じて30-40nm構造の割合が増加することから、染色体構造が周囲の環境に応じて変化を起こすこと、超好熱性アーキアThermococcus kodakarensisの染色体タンパク質として同定していたTrmBL2が、他のアーキアやバクテリアから水平伝搬した遺伝子の発現制御にかかわるなど未知の機能を有する可能性を示した。 前年度中に、以上の研究成果を論文として発表した。Euryarchaeota門のアーキアは、histoneをもつ種とバクテリアのHUに相同なHTaを持つ種があるが、ともにDNAを巻きつける基本構造を持つこと、そしてCrenarchaota門の種はDNAを巻きつける基本構造を持たないことを提示した。このことは、現在の真核生物の染色体構造の起源を考察する上で重要な成果である。 最終年度である今年度は、これまでの成果をまとめた総説を発表するとともに、将来の研究に向けた課題を示した。また、Micrococcal nuclease消化を用いた解析によりアーキアの染色体基礎構造を決定する手法を、著書として出版予定である(2022年度)。
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