研究課題
これまでの研究結果から、メタン菌の代謝の促進はグライガイト以外の硫化鉄(非結晶性硫化鉄など)では見られないことが明らかになっていた。そこで令和元年度では、その理由を網羅的発現遺伝子解析により解析した。その結果、非結晶性硫化鉄の場合、硫化鉄の添加無しの条件とほぼ同様の遺伝子発現パターンを示すことが明らかになり、グライガイト依存的な代謝促進を更に裏付ける結果を得ることが出来た。また、グライガイト存在下での発酵性細菌との共培養時においても、単独培養時に見られたように、鉄-イオウクラスターの合成や利用に関わる遺伝子群の発現上昇が確認されたため、メタン菌が水素をエネルギー源として生育する条件であれば、幅広い条件で同様の代謝促進メカニズムが働くことが示唆された。以上から、本現象を利活用するための基礎知見を取得できたと期待される。プロテオーム解析については、実際の解析には至っていないものの、概ねサンプルの調製方法は確立できたため、今後、これまでの結果を補完する実験として実施する予定である。研究を進める過程で、グライガイトには水素による二酸化炭素の還元反応に対する触媒活性があることが判明した。グライガイトの結晶構造は、生物がもつ鉄イオウクラスターと類似している。鉄イオウクラスターをもつ鉄イオウタンパク質は、特にメタン菌のような還元的アセチルCoA経路依存的に生育する生物にとって極めて重要なものである。以上から、この触媒活性は、メタン菌で見られるグライガイト依存的な代謝の促進機構と間接的に関連する可能性があるため、今後の研究展開のために考慮すべき重要で新しい知見であると期待される。
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Nature Ecology and Evolution
巻: 4 ページ: 534-542
10.1038/s41559-020-1125-6.
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2020/pr20200303_2/pr20200303_2.html