研究課題/領域番号 |
17K15257
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
桝尾 俊介 筑波大学, 生命環境系, 助教 (10767122)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | ピラジン生合成 / アミノ酸 / アセチル基転移酵素 / FAD依存型酸化酵素 / メチル基転移酵素 |
研究実績の概要 |
前年度に引き続き、2,5-ジメチル-3,6-ビス(4-アミノベンジル)ピラジン(DMBAP)の生合成に関与するPseudomonas fluorescens SBW25株のpfpapDEFがコードするタンパク質の機能解析を行った。 [PfPapD] PfPapDは、4APheを脱炭酸し、アセチルCoAのアセチル基を転移することで、生合成中間体、3-アミノ-4-(4-アミノフェニル)-2-ブタノン (APB)を生じる反応を触媒していることが明らかとしている。本年度は、PfPapDの酵素反応速度論的解析を行った。さらに、PfPapDの分光学的解析等から、酵素反応の反応モデルを構築した。 [PfPapE] 組換えPfPapEをDMBAPを基質、S-アデノシルメチオニン (SAM) をメチル供与体として反応させたところ、DMBAPが減少しアミノ基がメチル化されたMe-DMBAPが生成した。また、pfpapABCDEF 発現大腸菌の代謝産物中にもMe-DMBAPが検出された。PfPapEはSAM依存性のDMBAPメチル基転移酵素であることが示された。 [PfPapF] 前年度までに、組換えPfPapFを用いた各種解析から、本酵素が酸素を電子受容体としたグリシンの酸化反応を触媒することを示していた。本年度は、種々の基質候補化合物に対するPfPapFの酸化反応の有無を調べた。その結果、本酵素は、APBの自然縮合により生じる還元型ピラジンを酸化する活性を有することが明らかとなった。 一連の解析から、PfPapABCにより生合成された4APheは、PfPapD によりAPBへと変換された後、APBの自然縮合により生じた還元型ピラジンをPfPapFが酸化することで DMBAPが生成し、PfPapFによるメチル化により Me-DMBAPが生合成されるという生合成経路を明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ピラジン生合成経路の全貌を明らかとすることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
PapDEFあるいは類似酵素を用いた種々のピラジン生産系の構築に取り組む。すでに、ピラジン環の生合成に関与するPapDおよびPapFと相同性を示す酵素を選抜し、それらの組換え体を取得しているため、それらの酵素学的解析を進める。また、酵素あるいはそれらの発現菌を用いた化合物の生産系の構築に取り組む。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工遺伝子合成により目的酵素をコードする遺伝子を取得する予定であったが、これらを有する菌株を入手することが出来たため、ゲノムDNAを鋳型としたPCRにより当該遺伝子を取得することが出来た。本年度、人工遺伝子合成に使用する経費が掛からなかったために次年度使用額が生じた。これらは翌年度分請求額と合わせて、次年度作製予定の変異酵素やキメラ酵素をコードする遺伝子の人工遺伝子合成に使用する。
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