研究実績の概要 |
CYP27B1機能不全は、体内の25-ヒドロキシビタミンD3 (25D3) を活性型ビタミンD3(1α,25-ヒドロキシビタミンD3; 1α,25D3)へ代謝できず骨疾患を伴う。活性型ビタミンD3製剤の投与で回復するが、より副作用の少ない治療薬が望まれている中、我々はCYP27B1遺伝子欠損(CYP27B1-KO)マウス・ラットを用い、25D3投与が、副作用の少ない新しい治療法となり得る可能性を見出した。25D3による予防・治療法の確立を行う上で、[1]25D3投与時の活性型ビタミンD3を含めた種々の代謝物の体内動態、また、[2]CYP27B1遺伝子欠損時の1α位水酸化酵素の特定が重要な情報となる。[1]については、多数存在する各種25D3代謝物を酵素発現系により分取し、LC/MS/MSによる一斉定量分析法を確立した。確立した分析法を用いて25D3投与ラットの血中代謝物を調べたところ、24,25-ジヒドロキシビタミンD3や24-オキソ-25D3を含む5種の代謝物が検出された。[2]については、CYP27B1遺伝子欠損ラットから肝組織画分を調製し、25D3の1α位水酸化活性がみられるかを調べた。その結果、肝臓ミトコンドリア画分において活性が検出された。肝臓ミトコンドリア画分に存在するCYP27A1はビタミンD3の25位水酸化酵素として知られているが、発現系を用いた実験から、CYP27A1は低いながらも25D3の1α位水酸化活性を有しており、CYP27B1遺伝子欠損時には肝臓中のCYP27A1によって25D3から活性型ビタミンD3が生成されていることが示唆された。25D3投与は、上述したI型くる病モデルであるCYP27B1-KOラットに対してのみでなく、II型くる病モデルである変異型VDR導入ラットにも効果があることも明らかにしており、今後、詳細な解析を行っていく。
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