研究課題
骨芽細胞の大幅な増殖によって骨粗鬆症における骨形成と骨破壊の不均衡を改善するという発想に基づき、骨芽細胞の分化・増殖に関わる微量天然有機化合物の全合成研究による量的供給を実現し、治療法開発に向けた基礎・応用研究を活性化することを目的に本研究を開始した。骨芽細胞増殖活性を有するネオリグナン類の合成研究においては、まず安価に入手可能なバニリンを出発原料として、炭素鎖伸長反応や不斉ジヒドロキシ反応を含む数工程の変換によって光学活性なエポキシベンジルアルコール化合物へと導き、続いて別途調製した桂皮酸誘導体のフェノール部位との光延反応によるエーテル化を行った。用いる試薬や溶媒の種類、反応温度や試薬類の当量等それぞれにおいて検討を重ねた結果、最適な反応条件を見出し、高いジアステレオ選択性でエーテル化体を得ることに成功した。現在は分子内環化反応を用いた炭素-炭素結合形成反応によって、目的のネオリグナン骨格を構築する検討を継続中である。間葉系幹細胞に対して骨芽細胞への分化を促進する転写因子を発現誘導するテルペノイドの合成研究においては、重要中間体の合成を目標に研究を展開した。まず文献既知化合物をより簡便かつ大量に調整する必要があったため、その改良合成に取り組むこととし、最初に出発原料であるカルボンから誘導して官能基の保護を施した基質に対して、直接的な酸素官能基の導入やラジカル反応によるハロゲン化を試み、多種多様な反応条件を検討した結果、所望の位置を官能基化する条件を見出した。この条件を更に精査して関連テルペノイドの全合成研究に応用してその全合成を達成し、Angew. Chem. In. Ed. 誌とBiosci. Biotechnol. Biochem.誌に投稿して掲載が採択された。
3: やや遅れている
本年度は骨芽細胞増殖活性を有するネオリグナン類についてはその全合成を達成する計画であったが、最終段階のリグナン骨格の構築に検討を要している。骨芽細胞への分化を促すテルペノイドについては、重要中間体の合成を完了する予定であったが、基本骨格への官能基導入に検討を要した結果、近い所までは到達しているものの重要中間体までは至っていない。
ネオリグナン類については早急に基本骨格の構築を行い、続いて種々の官能基変換を経てその合成を達成する。その後は同様の生理活性を有するポリケチド類の合成を開始する。合成対象化合物に関する先行研究の成果が最近他グループから報告されたので、その情報も加味して必要な研究戦略を改良する。テルペノイドについては重要中間体の合成を急ぎ、フラグメントのカップリングを行って全合成を達成する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry
巻: 82 ページ: accepted
10.1080/09168451.2018.1452603
Angewandte Chemie International Edition
巻: 56 ページ: 10911-10914
10.1002/anie.201706086