最終年度はまず、肥満モデルマウスに対してFP株を経口投与し、強制的にFlavonifractor plautii(FP)株占有率を高めた際の肥満誘導性炎症に与える影響について調査を行った。具体的には高脂肪飼料(60kcal%)を10週間給餌することで肥満マウスを作出し、10-12週目まで毎日、FP株 を1×10^8 cfu/mouseで経口投与したところ、FP株非投与群と比較して精巣上体脂肪組織におけるTNF-α mRNA発現が有意に減少することを見出した。本研究ではFP株の増加が脂肪組織の炎症反応の抑制に関与するかを明らかとすることを目的の1つとしていたため、最終年度において当初目的を達成した。 一方で、FP株が腸管M細胞からの腸細菌の取り込みを制御することで過剰な免疫応答を抑制しているかどうか、肥満マウスを用いては検証できなかったが、卵白アルブミン(OVA)感作マウスを用いた試験で腸細菌の免疫系への影響を示唆する結果を得た。具体的には、OVAと水酸化アルミニウムゲルアジュバントを腹腔内投与することで作出したOVA感作マウスにFP株を投与すると過剰な炎症応答が抑制されると共に、腸管関連リンパ組織内においてFirmicutes門に属する菌が特異的に増加した。今後、FP株投与による腸管関連リンパ組織内への細菌取り込み機構や炎症応答抑制との関連を検証する予定である。 続いて、FP株の腸管バリアへの影響を評価した。具体的には腸管上皮細胞株Caco2を腸上皮様に分化してFP株と共に前培養した後、サイトカイン(TNF-αとIFN-γ)を添加することで腸管バリアの破綻を誘導した。腸管バリア破綻の指標となる経上皮電気抵抗(TER)値の低下はサイトカインの添加により、誘導され、FP株の添加によってTER値の低下が抑制される傾向にあった。従って、FP株は腸管バリア破綻を抑制することが示唆された。
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