本研究の目的は、酢酸摂取が宿主の腸内細菌叢構成にどのような影響を及ぼすか明らかにすることである。平成29年度には、酢酸摂取が腸内細菌叢構成を変化させ、糞便中の酢酸量を増加させることを明らかにした。糞便中の酢酸量の増加は、摂取した酢酸ではなく、腸内で生成された酢酸量が増加したことが要因である。最終年度である平成30年度では、酢酸摂取によってどのような細菌種の割合が変化したかを、リアルタイムPCRによる門レベルでの解析および次世代シーケンサーを利用したメタゲノム解析により明らかにした。その結果、酢酸あるいはペクチン摂取を始めてから1週間および4週間後に、肥満と相関があるとされているFirmicutes門とBacteroidetes門の比が水を摂取させたコントロール群と比較して低下することが分かった。さらに、メタゲノム解析の結果、いくつかの細菌種の増減が確認できたが、細菌種を特定できるものは少なかったが、Lactobacillus属のある細菌種が酢酸を摂取することで増加することが明らかとなった。このLactobacillus属の細菌種は、潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患の病態を改善することが報告されており、酢酸摂取が腸内細菌叢構成を改善し、炎症性腸疾患の病態を改善することが期待される。
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