魚油は肝臓や脂肪組織に作用し、脂質代謝を促進することで肥満改善に寄与している。その一方で、生体内の最大の代謝組織の一つである骨格筋における魚油の働きはあまりわかっていない。申請者らはこれまでに魚油摂取によりラット骨格筋の脂質代謝能力が向上すること、さらに魚油に含まれる多価不飽和脂肪酸の一種であるエイコサペンタエン酸(EPA)が核内受容体PPARδを活性化し、脂質代謝亢進に寄与していることを明らかにしている。本研究では、EPAによる脂質代謝改善作用のメカニズムを骨格筋の観点から解明することを目的としている。 ラット筋芽細胞株L6から調製した筋管の培地中に30 μM EPAを添加し、培養12時間後にサンプルを調整し、マイクロアレイに供した。結果については現在解析を進めている。 次にEPA添加によってマイオカインの産生、脂肪細胞の褐色化が生じているかの確認に取り組んだ。30 μM EPA含有 30%FBS-DMEM培地を用いて、マウス単趾屈筋由来の筋線維を培養し、培地を24時間ごとに回収した(コントロールは溶媒のみ)。回収した培地を用いてマウス胎児皮膚由来線維芽細胞株3T3L1細胞の培養を行った。しかし、通常3T3L1細胞の脂肪細胞への誘導には10%FBS-DMEM培地を用いるためか、回収培地では脂肪細胞の分化が誘導されなかった。その後、単離筋線維の血清濃度などの条件検討を行ったが、3T3L1細胞の脂肪滴の形成までは誘導できなかった。そのため、単離筋線維の代用としてマウス由来筋芽細胞株C2C12を2%HS-DMEMを用いて、筋管を形成し、その後30 μM 10%FBS-DMEM培地を用いて培養を行った。筋管細胞では細胞の収縮は確認されていなかったが、幼若な筋線維と位置づけされている。現在、脂肪滴形成の経過を観察しており、mRNAやタンパク質の発現量を解析する。
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