SRSF1タンパク質はpre-mRNAのエクソン配列と結合し、スプライソソームを正しいスプライス部位に引き寄せて切断させる。そのため、標的エクソン配列との 結合を変化させるSRSF1タンパク質の翻訳後修飾は、標的エクソンの選択的スプライシングの制御につながるため重要である。 本研究では、選択的スプライシングを制御するSRSF1タンパク質が、細胞内のエネルギー恒常性を制御するAMPKキナーゼによってリン酸化される可能性が示されたことから、AMPKキナーゼがSRSF1タンパク質をリン酸化し、標的のエクソン配列との結合が変化することで、その選択的スプライシングに及ぼす影響を明らかにする。 これまでに、AMPKキナーゼがSRSF1タンパク質をリン酸化することをリン酸化特異的抗体を用いて明らかとし、SRSF1タンパク質がAMPKキナーゼ の新たな基質であることを示した。また、SRSF1タンパク質と結合するモチーフ配列を有するRNAを人工的に作成し、これを用いて結合性の解析をin vitroにおいて行ったところ SRSF1タンパク質のリン酸化修飾がRNAとの結合性を低下させることが示された。さらに、AMPKが実際にSRSF1タンパク質を介して選択的ス プライシングに影響を及ぼすか解析を行った。その結果、SRSF1タンパク質がターゲットとする、マクロファージ刺激タンパク質受容体であるRonのmRNAにおいて、AMPK活性の変化によって選択的スプライシ ングの変化が観察された。 以上のことから、AMPKキナーゼはSRSF1タンパク質のリン酸化を介して選択的スプライシングに影響を及ぼす事が示された。
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