近年、腸管樹状細胞がRALDH2という酵素を発現しており、その働きにより食餌由来のビタミンAをレチノイン酸へ変換することで腸管免疫の恒常性維持に寄与することが報告された。研究代表者はこれまでに、RALDH2の発現を亢進する食品成分の探索を行い、培養細胞レベルでKaempferolというポリフェノールがRALDH2の発現を亢進することを見出してきた。本研究では、KaempferolによるRALDH2発現亢進機構を解明し、腸管免疫に及ぼす影響を解析した。 前年度までに転写因子AhRがRALDH2発現の負の調節因子であり、KaempferolはAhRにアンタゴニスト様に作用することでAhRによるRALDH2遺伝子発現抑制を解除することを明らかにしている。 今年度はマウスにKaempferolを経口摂取させ、腸管の樹状細胞においてRALDH2の発現および活性が亢進するかについて検討した。しかし、様々な条件で検討を行ったが、RALDH2の発現を亢進させることはできなかった。そこで、マウスの腸管膜リンパ節細胞をKaempferol存在下で培養し、RALDH2発現を解析した。その結果、ex vivoのDCにおいてもKaempferol処理によりRALDH2発現が上昇することが明らかとなった。また、AhRのアンタゴニストであるCH-223191をマウスの腹腔内に投与してもRALDH2発現が上昇することが示され、生体のDCにおいてもAhRによってRALDH2発現が負に制御されていることが明らかとなった。以上の結果から、Kaempferolを経口摂取してもRALDH2の発現が上昇しなかった原因として、Kaempferolの吸収効率や代謝による活性の喪失などが疑われた。今後は、Kaempferolの配糖体を用いるなどして腸管樹状細胞におけるRALDH2の発現亢進につなげたい。
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