研究課題
30年度は、「マスト細胞の機能変化とアレルギー炎症の関連解明」について、腸内共生菌が存在しない無菌マウスと抗生物質処理により腸内共生菌をコントロールしたマウスを用いて、全身性アナフィラキシーにおよぼす効果を解析した。腸内共生菌が存在する通常マウスに比べて、無菌マウスでは予想に反して、アナフィラキシーによる体温低下が軽減された。そこで、どの腸内共生菌が関与しているのかを絞り込む目的で、抗菌スペクトルの異なる抗生物質で処理したマウスを使用し、同様の解析を行った。その結果、4種類(アンピシリン、ネオマイシン、メトロニダゾール、バンコマイシン)の混合抗生物質で処理したマウスでは、無菌マウスと同様にアナフィラキシーによる体温低下が有意に抑制された。また、グラム陽性菌に対して抗菌スペクトルを示すバンコマイシンのみでも4種類の混合物と同様にアナフィラキシーが抑制された。一方、グラム陰性菌に対して抗菌スペクトルを示すポリミキシンのみの処理では抑制効果は見られなかった。このことから、グラム陰性菌がアナフィラキシー抑制に関わっていることが示された。マスト細胞活性化の指標であるMCPT-1の血中濃度は、いずれの群でもコントロールマウスと同程度であったことから、腸内共生菌はマスト細胞の機能ではなくマスト細胞の活性化以降のイベントに作用し、アナフィラキシーの症状に関わっていることが示唆された。そこで、腸組織におけるヒスタミンレセプター(HR)のmRNA発現量を測定したところ、HRの1つであるH3RのmRNA発現量が抗生物質処理により減少した。以上のことから、腸内共生菌は腸組織におけるHRの発現を調節することによりヒスタミン感受性を制御し、アナフィラキシー症状に影響をおよぼすことが示された。
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