本研究では亜高山帯林の先駆樹種として気候変動によりいち早く対応すると期待されるカバノキ属樹種ダケカンバに着目し、水平(緯度、経度)および垂直(標高)方向に沿った集団遺伝学的構造を評価した。その結果、関東地方北部あたりを堺にその南北で遺伝的に異なるグループがあること、1つの山でも標高間で遺伝的に違いのある山とそうでない山があること、中央アルプスなどでは2900m級の高標高集団の方が低標高よりも遺伝的多様性が高いことがわかった。これら結果について過去の分布を復元するモデルも用いて過去の気候変動との関係を評価した。また高標高集団が今度の気候変動下で重要な役割を果たす可能性があることがわかった。
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