本研究では、一年目の報告でも記した通り、同位体のトレーサーを用いた追加の予備実験が必要となるなど、計画段階において改善すべき点があったが、前年度の課題をクリアすることは難しかった。よって、当初の計画で予定通り進まなかった際の対応策に従い菌根菌ではない緑膿菌を代替モデル生物として用いて共生と競争の進化ダイナミクスの決定要因を解明する実験を行った。この実験は、応募者自身の先行研究で用いた既存のシステムであり、予定通り、海外の研究者との共同研究体制のもと、実験を終え、期間内にデータを収集することができた。解析結果は学術論文としてまとめており、可能な限り早く出版したいと考えている。 また、関連する研究成果として、菌根菌と植物の相互作用に関するこれまで研究に関連する成果として、1篇の学術論文を国際誌に掲載され、そのアウトリーチ活動により、成果が各種新聞やWebメディア、博物館のレクチャーシリーズなどでとりあげられたことは大きな成果であった。アカマツと共生する菌根菌とアカマツ実生の定着結果は、日本の伝統樹種であるがゆえに大きな注目を集めたといえる。また、同成果は、京都大学学術出版会の「遺伝子・多様性・循環の科学:生態学の領域融合へ」において詳細に日本語での解説論文として出版することができた。本研究課題に用いている同位体のトレーサーなどの研究手法についての最新技術に関する解説論文も出版することができた。このように、本研究課題を通じ、研究遂行から成果発表、そしてそのアウトリーチまで踏み込んだ研究活動を展開できたといえる。
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