研究実績の概要 |
今年度は、昨年度作成した遺伝子破壊用プラスミドを用いて、外生菌根菌ホンシメジのオートファジー関連遺伝子LsATG8およびNADPHオキシダーゼ制御因子LsNoxRの遺伝子破壊を試みた。その結果、LsATG8破壊試験では11株のノーセオスリシン耐性株が得られ、PCRによる確認を行った結果、11株全てが遺伝子破壊株であった。一方で、LsNoxR破壊試験ではノーセオスリシン耐性株は得られなかった。LsNoxRは外生菌根菌においては破壊されると致死となる可能性も考えられる。 前年度までの結果と合わせると、KU80破壊株を親株にした場合の遺伝子破壊効率は4遺伝子合計で92%(23/25)となり、野生株を親株とした場合の0.3%(1/363)からは飛躍的な上昇が認められた。以上の結果から、我々の研究チームにおいては外生菌根菌ホンシメジの遺伝子破壊を自在に行うことが可能になったと言える。 また、4種類の遺伝子破壊株(LsKSS1, LsMPK1, LsHOG1, LsATG8)について各種表現型解析をおこなった。菌根共生試験においては、LsKSS1破壊株が共生能力を欠損しているのではないかという予備的データが得られた。これについてはサンプル数などを増やし、今後詳細に解析をすすめていく予定である。LsHOG1破壊株は高浸透圧感受性を示し、HOG1経路の異常活性化剤であるフルジオキソニルに耐性を示した。LsMPK1破壊株においては、寒天培地上で親株とは明確に異なる“シート状”の菌糸生育がみとめられた。LsATG8破壊株は親株と比較してコロニーサイズが小さくなった。
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